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黄金のプチねた#65狡さと優しさ

「「アディオース」」
 駅のホームで言峰薫は手を振った。
 走り去る列車の窓からマサルと、キャリーケースの中のめそが手を振っている。

 —— さらば友よ。また会う日まで ——

 同好の士を見送って、薫は再び街に出る。時計の針が7時を指して、サラリーマンは帰宅時。
 雑踏をかき分けて、薫は一人、オフィス街に逆行する。

「ふぅ、やっと見つけましたよカヲル」

 キング・グループの本社オフィスの入り口に、金髪紅眼の少年が待っていた。
 ギルフォード・キングこと小さな王様ギルガメッシュは薫に近寄り、手にした袋を押し付けた。
「貴女がよく行くあの店の、ミックスベリー・パイです。レッド・ラズベリー、ブラック・ベリー、それとゴールデンイエロー・ラズベリーのパイが出ていたので買っておきました」
 そう言って、ニパッと笑う少年王。
「……ずるいです」
 ムスッと拗ねる己の従者。しかし王様は揺るがない。
「さぁ、帰りますよ。言峰が心配しています」
 そう言って、彼はスタスタ行ってしまう。ギルガメッシュは振り向かない。
 手渡された袋を握りしめ、薫は彼の、後を追う。
「別に全部食べたことを怒っていたんじゃないのです。みんなで食べようと思っていただけなのです」
「はいはい。ちゃんと判っていますよカヲル」
「大きい王様も判っていますか?」
「うーん。大人のボクはどうなんでしょうね? あはははは」
「笑い事じゃないですよー、それは狡いですよ?」
「やれやれ、王であるボクに向かってその口のききようは何ですか?」
「……申し訳ありません。王様」
 しゅんとなり「でも」と薫は呟くが、彼女は何も続けなかった。
 そんな薫に、ギルガメシュは少しだけ振り向いた。
「まあいいでしょう。それよりも早く帰りますよ。そしてみんなでそれを食べましょう」
 彼は少しだけ笑みをみせ、彼女は小さな笑みに救われたかのように笑顔になった。
 そして小さな王様と、それに従う小さな従者は、待ち人のいる教会へと帰っていった。


あとがき
 プチ家出編、終了。……家出になってねえ。orz.
2009.2/1th
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