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黄金のプチねた#119女の性(さが)

 お皿の上に並ぶのは、カラメルソースに濡れた輝くプリン。ホイップクリームが添えられて、アイスクリーム&カットフルーツも硝子の器に飾られる。
 これはプリン・ア・ラ・モード。
“a la mode”とは流行や洗練さを意味するフランス語。しかしこの名は日本の造語。海外では通じない。日本生まれのスイーツだ。
 フランスにはパルフェという氷菓子があり、これは卵黄・砂糖・クリームなどを混ぜて作るアイスクリームに果物を添えて出すものだ。名前の由来であるらしいが、原型ではありません。
 いわゆるパフェも日本の造語。あれをパフェ(parfait:パーフェー。フランス風パルフェ)と言われて納得する欧米人はいねぇのである。
 アメリカのサンデー。細長いグラス上の容器にアイスやクリーム、フルーツを盛ったものを、何故か日本ではパフェと呼ぶ。
 多分、グラスとお皿で名が違うとか、アイスの材料で違う料理になるのだと理解できなかったのだろう。ロンドンで「SOBA」のチェーン店に入ると、そばはそばでも中華そば(ラーメン)が出てくるようなものだ。
「つまりです。歴史や原典、元祖などを調べておくのは大切な事なのです」
 そう言い少女はプリンにスプーンを挿し込んだ。
 ぱくり。
 言峰薫は美味しさに目を細め、口元を笑みに緩める。そっとお匙を皿に載せ、コーヒーを一口すする。
「古代中国で皇帝を堕落させ、国を牛耳った宦官たちは『皇帝に学問をさせてはならない。特に歴史を学ばせていけない。歴史を学ぶと過去を鑑みて現状に疑問をもち、操れなくなる』とか言っていたはずです。逆に言えば歴史に感心がないような奴はチョロイと言うことですね。あっはっは」
「そうなのか?」
 やや不快そうに顔をしかめたのは衛宮士郎だ。話があると誘われた。日曜午後の喫茶店でこれはデートか?
 しかし言峰薫が相手では、どうにも気持ちが盛り上がらない。どうせだったらこいつではなく……。
「まぁそれは置いといて。士郎くんの監視と頑張る貴男へのご褒美と、今日は教会に一人で寂しい私の都合を考えて『甘ものは別腹・バナナはおやつに含まない』作戦を決行したわけです」
「すまん。意味が分からない」
「そんなっ?! 意味なんか必要ないじゃないですか! 一人でスイーツ食べる寂しい私を、貴男は助けてくれないのですか?!」
「判った。思う存分食べてくれ」
「イタダキマス」
 薫はプリンに再びスプーンを挿し込んだ。
(勉強してるかって事かな)
 衛宮士郎はコーヒーの香りを吸込み思索する。
 彼女は時々家に来る。畳に転がり喜んだり、コタツに潜って出なかったり、お風呂を占拠しそれはいいのかと悩んでしまうことがある。
 藤村大河に間桐桜、言峰薫の三人が揃うと男が一人で肩身が狭い。
 親父、オレは頑張ってるよ。夕焼けに切嗣の笑顔を幻視する。
「それでどうするんだ? 何か聞いておかなくちゃいけないこととかあるか」
「いいえ。特にはないですよ。ボランティアご苦労様というのは本心です。好きなモノを食べてください」
「そうなのか。悪いな」
「良い子の士郎くんにお姉さんからご褒美です。オホホホホ。たんとお食べ」
「おい」
 くすりと笑って肩をすくめる言峰薫。プリンアラモードをやっつけて、しかしメニューを開くということは、追加注文するらしい。
「アベック限定、ウルトラジャンボパフェを注文してもいいですか?」
「それが狙いかっ?!」
 すると薫は目を逸らし、よよよと斜めにしな垂れる。
「ああ、甘いモノが美味しいこの身が悲しい。だって女の子だもの」
 こいつは嘘つきだと衛宮士郎は理解した。


あとがき
 裏では壊れてきていますがそれはまた別の機会に。間桐兄妹と合流すれば長くも出来たのですが、それもまた別の機会に。
2011.2/28th

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