黄金の従者#75鷹の目
夜の冬木市新都、中央公園に言峰薫は立っていた。暗がりの内にぽつんと一人。彼女は呪文を口ずさむ。
—— 告げる(セット)、感覚強化(フィーリング・エンチャント) ——
見開いた目に魔力が集う。薫の視覚は強化され、宵闇を遠く見渡した。そして更に呪文をつなぐ。
—— 概念強化(イデア・エンチャント)鷹の目(ホーク・アイズ)、以て彼方を見渡す力となれ——
薫はおもむろに携帯電話を取り出した。
RRRRR.RRRRR.
(( もしもし、こっちはいつでもいいですよ ))
小さな王様ギルガメッシュの声がした。
薫は地表から冬木センタービルの屋上を、そこにあるキンググループ管理の空中庭園に視線を送る。
魔術で強化された薫の視界は、支柱の上に立つギルガメッシュの姿を捉えた。
「上、下、右、グー、チョキ、パー。えーと指三本、親指と小指、むむむ。王様、振られると判りません」
こうして今日も、魔術の修行は続くのだ。
あとがき
きっと地道にやっていると思います。
2009.6/6th