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黄金のプチねた#44月光
夜の風にも寒さが消えた春の終わりの衛宮邸。その縁側に、浴衣姿の切嗣が腰掛ける。緩い風にも星が瞬き、月に光を青く感じなくもない。
道場からは竹刀がぶつかる音がする。
士郎、そして大河が稽古と称して遊んでいる。士郎はきっと真面目な顔で修行しているつもりだろうが、彼もまだまだ子供である。大河に遊んでもらっていると言うべきだろう。
切嗣はそっと右手を胸にやる。
あの二人が近くにいると、呪いの声が聞こえることがない。だがしかし、この身から呪いが消え去ることもない。
—— 死ね・シネ・しね・死ね・シネ・しね ——
己の心に耳を澄ませば、闇の中から声がする。判っている。この声からは逃げられない。
だが、それがどうした?
負けてたまるか。最後の最後、その時まで、衛宮切嗣は戦い続ける。勝つためではないし、勝つことも出来ないのだが、戦うことに意味がある。
戦っているのは自分だけではなかった。それを示してくれた少女のために、そして娘に会うために、這いずってでも生きてやる。
その時が来るのは、そう遠くはないだろう。だから保て。だから耐えろ。だから負けるな。切嗣は月を見上げる。
「爺さん」
ふと気が付くと、士郎が目の前にやって来ていた。彼は全身汗だくだ。
なんだいと尋ねると、自分も一緒に修行しようとのお誘いだ。そこに大河もやってきた。切嗣はお風呂を済ませたのだから、余計なことを言うなと大河が言う。
しかし士郎は取り合わない。
「いいじゃんか。汚れたらまた風呂に入ってキレイにすれば」
えーっと言う藤村大河。しかし切嗣は今の言葉が気に入った。
何度でも汚れる。ならば何度でも洗い流す。そんなものかも知れない。
「よーし、士郎! いっちょう僕がもんでやるかな!!!」
「へへん、返り討ちにしてやるぜ!」
「ええーっ?! いいんですか切嗣さん?!」
切嗣は立ち上がり、大河の竹刀を受け取った。
2008.8/28th
本文を切ったもの。微妙ですが、ご容赦を。
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