トップ 管理人プロフィール オリジナル小説 二次創作トップ ご意見感想掲示板 ときどき日記 メール リンク

黄金のプチねた#35リリカル

 風のない新月の静かな夜に、一人の少女が空を見上げた後で振り返る。
「では行ってきますね」
 そう言い少女、言峰薫は首にかけたネックレスに手をやった。

 ーー 告げる(セット) ーー

 呟くと、ネックレスのアイアゲート(目玉石)はギョロリと動き、周囲に視線を投げかけた。
 これは視線除けの魔術礼装、起動させると目玉石から視線が放たれ、無意識に視線を逸らさせ着用者を認識させないようにするものだ。隠密活動用と言って良い。
 そんな視線除けのネックレスを起動させ、薫は翼を広げて空に飛ぶ。
 見送る綺礼とギルガメッシュに手を振って、風を捕まえ高度を上げた。見下ろせば、新都の灯りがキラキラしている。人の営みが生み出した輝きに、薫はしかし苦笑した。
 電気を大切にしましょう。地球は有限。自然の恵みも無限ではありません。
 そんなことを考えながら、未遠川に沿って河口へ下り、海岸線に沿って飛ぶ。
 今日は飛行魔術で遠出する。朝まで飛べるか挑戦なのだ。ウエストポーチにおにぎり一個と缶コーヒー。そしてお金と宝石を詰め込んで、行ける所まで行ってみる。帰りは電車の始発を予定。どこまで行けるか挑戦だ。
 海まででると風もある。しかし防刃素材を重ねた特性の尼僧服は風を防いで寒さをあまり感じない。よしよし中々役に立つ。
 星の光に照らされて、薫はゆっくり飛んでいく。
 こうして飛ぶのも慣れてきた。まだ接近戦をこなすことは出来ないが、槍を使った一撃離脱はだんだん形になってきた。
 時々叩き落とされるけど、ギルガメッシュに褒められるようにもなってきている。やはり継続は力と言うことか。日々の鍛錬が大事です。
 飛行魔術・火の鳥は世界の魔術基盤から形而上学的に力を引き出し、薫の体を夜空に飛ばす。周囲の大源(マナ)を取り込み小源(オド)へと変えて、火属性の魔力を撒き散らす。
 今時は珍しい飛行魔術の使い手、薫は鳥と化して飛翔を続けた。

 朝が来た。地平線から光が伸びる。

 どれほど飛んできたのだろうか? 薫もよくは判らない。ゆっくり飛んで5時間くらい? はてさてここはどこでしょう?
 明るくなれば人間達が動き出す。そろそろ地面に降りて駅でも探そう。そんなことを思いながら高度を下げようとした薫の視界に、信じられないものが飛び込んだ。

 ーー クェェェエエエエ!!! ーー

 こっちに向かって飛んでくるのは大きな鳥だ。頭の先から尾羽の先まで四メートル? 翼を広げて六メートル? いや、もうちょっと大きいか?
 そして鳥の体はゆらめきを持って光を放つ。ああ、あれは「火の鳥」か。
「嘘ぉぉぉおおお?!」
 天然物の幻想種?! ありえないでしょ?! ちなみに近くに火山とかはありません。
 顎を落としてその場に停止(ホバリング)した薫に向かって、火の鳥はやってきた。近づけば、羽ばたきにより熱風が吹き付ける。
 薫と火の鳥は見つめ合う。
 薫は翼を広げてふよふよと浮いている。火の鳥は、ばっさばっさと羽ばたいて、しかしやはり浮いている。
「えーと、おはようございます」
 取り敢えず挨拶してみよう。薫はぺこりと頭を下げた。
 火の鳥は、ちょっと首を傾げたが、次の瞬間、空気を振るわせ鳴き声を張り上げた。

 ーー クェェェエエエ(メス・ダァァァアアア) ーーー

 ナンカ聞こえた。何でしょう? 飛行魔術の概念「鳥・翼・不死鳥・火の鳥」により、どこかでパスが成立したか? まさか幻想種とお話しできるとは、やはり魔術はファンタジー。
 などと薫が思っていると、火の鳥(推定・オス)は、ばっさばっさと羽ばたきながら近づいて、こちらの匂いをかいでる模様。むむむ、それは動物的に積極性のあるアプローチではなかろうか?
 しかし貴重な体験だ。あとで凛に自慢しよう。
 だが薫は気が付いた。何かおかしい。この火の鳥からは何故か神秘を感じない。それはおかしい。人界にいる幻想種は百年も年月を経ていないと聞いたこともあるのだが、それにしても神秘の波動を感じない。魔力は強い。薫のそれより一桁以上は多いと言って良い。なのに神秘を感じない。ギルガメッシュの宝具が放つ、あの感覚を感じない。
 おかしいな?
 薫が首を傾げていると、火の鳥は少し距離をとり、翼を広げて高らかに鳴き上げた。

 ーー クェェェエエエエ(オマエ・卵ヲ産メェェェエエエ) ーー

 は? 薫ちゃんは、頭が真っ白になりました。
 グルグルと唸る彼の声(テレパス)を聞き取ると、
 オマエはメスで、オレはオス。だからオマエはオレと(ピー)して卵を産め。 
 どうやら彼は発情期。いやん。私、恥ずかしい。
「お友達でお願いします! さようならぁぁぁあああ!!!」
 言峰薫は逃げ出した。

 ーー クェェェエエエ(卵ヲ産メェェェエエエ) ーー

「嫌ぁぁぁあああ! 本気で嫌ですぅぅぅううう!! 私はこれでも主にして神たる王に仕える身なので、男の方とはお付き合いできませぇぇぇえええん!!!」
 涙目になり必死に逃げる薫の後ろを、大きな鳥が追い掛ける。羽ばたく音がつきまとう。
 ありえねぇぇぇえええ!!! 心の中で絶叫しながら、必死で飛行魔術を制御する。もっと早く、もっと鋭く、加速しろ加速しろ加速しろ! 大事なものを守るため。ここで(ピー)するわけにはいかんのですよ!

 ーー クェェエエエ(R発言に付き自主規制) ーー

「ぎゃぁぁぁあああ!!!」
 ついに薫は捕まえられた。上から体を押さえられ、大きな爪で肩を掴まれ動けない。そして二羽は一緒に降りて、砂浜に着地した。
 押しつぶされた薫の上に、火の鳥は座り込む。薫は必死にじたばたするが、大きな鳥はびくともしない。

 ーー クェェェエエエ(諸事情により自粛します) ーー

 薫は目の幅で涙した。だばだば流れる涙の量が、少女の気持ちを物語る。
 ああ、一体どうしてこんなことになったのだ。きっとこれから幻想種の不思議パワーで卵を産まされてしまうのだ。そして海の見える洞窟で卵を暖め、生まれた雛にはカレンと名付け、サカナとミミズをとってきた火の鳥さんと「おかえりさないあなた。さぁカレン、サカナをいっぱい食べるのよ」などと会話を交わすのだ。

 もぞもぞっ。

「って、現実逃避してる場合じゃないから俺! 助けてーっ!! おじさま王様タスケテェーッ!!!」
 しかしここは冬木から遠く離れた何処とも知れぬ海岸線。とても声など届かない。
 さすがの薫も諦めかけたその瞬間、煌めく光が差し込んだ!
「ディバインシューター、シュート!」
 力のこもった言葉と共に、魔力の光が火の鳥を跳ね飛ばす。グェッと呻くエロスな鳥から、薫はやっと解放された。
「大丈夫ですか? お姉さん」
 その声に見上げると、二人の子供が空を飛んでいた。
 声をかけてきたのは女の子。制服を思わせる白を基調とした服を着て、手には紅玉をあしらった金の穂先の杖を手にしている。栗色の髪をサイドで束ねた様態は、薫より年下の初等部低学年に違いない。
 もう一人は男の子、マントを着込んで半ズボン。日本人には見えません。だけどこっちも子供、やはり七歳か八歳くらいではなかろうか?
 しかし二人は浮いている。少女は足首付近から魔力の翼を伸ばしている。あれは「羽付サンダル(エア・ウォーキング)」系の飛行魔術か? 少年の方は空中に魔法陣を投射して、それを足場にしているようだ。
 見かけによらず強力な魔術師だ。言峰薫は判断した。
「助かりましたっ!」
 言って薫は翼を広げ、二人の横に近づいた。

 ーー クェェェエエエ(赤面するような発言につき自主規制) ーー

 うっと薫はたじろぐが、二人の子供は険しい顔を崩さない。どうやら二人は鳥の言葉を理解できない様子。よかった。あれはR指定なのである。
「えーと、貴方達はあれを、」
「あの! お姉さんはジュエル・シードを集めているんですか?!」
 何を聞けばいいのやらと薫が口ごもっていると、少女が緊張した顔で聞いてきた。しかし薫にはワケが判らない。
「ジュエルシードって、何?」
 鳥から目を離さないまま薫が聞くと、少女と少年はぽかんとした顔になる。
「えええ?! じゃあどうしてあれと戦っていたんですか?」
「いや、戦っていたんじゃなくてですね、空を飛んでいたら近づいてきてですね、」
 ふんふんと頷く少年少女。おい、目線はあっちに向けておけ。
「話しかけてきたと思ったら「卵を産め」と襲われました」
「「え?」」
 少年少女が赤くなる。しまった、この手に話題は早かったか。
「そ、それはともかく何ですかあれ? 貴方達は知っているようですが?」
「は、はい! あれはジュエルシードというロストロギア(古代遺産)が生物を取り込んだ暴走体です」
 少年が応えてくれたが薫には判らない。ジュエルシード? ロストロギア? 暴走体?
 薫は不思議そうな顔になり、向こうも不思議そうな顔をする。
「えーと、つまり宝石魔術の魔術礼装(ミスティック・コード)が暴走してるってことですか?」
「「宝石魔術? ミスティック・コード?」」
  今度は向こうさんが首を傾げた。何か話が通じていない。飛行魔術を操るほどの子供なら、きっとどこか名のある魔術師家系の子供に違いないのだが。
 どうしよう? 三者三様に困っていると、火の鳥は声を張り上げ怒りを示し、こちらに向かって飛んできて、白い服の少女にクチバシを突き立てる。
「なのは!」
 少年は悲鳴のような声を上げたが、なのはと呼ばれた少女は翼で風を蹴るかのように、くるりと華麗に身をかわす。
 上手い。飛行の技術で完全に負けている。魔力放出を組み合わせれば話は違うが、素質が違うと薫は唸る。
「私は言峰薫といいます。貴方達は?」
「高町なのはです」
「ユーノ・スクライアです」
 ……知りません。日本にいる魔術師って知らないな。蒼崎さんとアリスさん? 今度調べておきましょう。
「では高町さん、ミスタ・スクライア、あれはどうすればいいですか?」
「え? なのはでいいです。えーと、ユーノ君?」
「ああ、僕もユーノで結構です。暴走体は実体を持っていて強力ですが、動きを止めれば封印できます」
「……。つまり、死なない程度にのしてしまって構わないのですね?」
「はい! って、ええ?!」
 あわてふためく少年、ユーノの声を置き去りにして薫は一気に加速した。
 つまりこいつは紛い物。幻想種ではなく鳥にエーテル集めた使い魔みたいなものとみた! どうりで神秘を感じなかったはずである。よくもやってくれたなこの野郎!

 ーー 告げる(セット) ーー

 薫は黒鍵を取り出した。

「ええ?!」
 驚く自分を置き去りにして、コトミネ・カオルは加速した。誰とも知れない航空魔導士、しかしどうやら敵ではないらしい。
 滅びた魔法文明が生み出した危険な遺産「ジュエルシード」は彼が発掘した物だ。そしてあれは移送の途中で暴走してこの次元世界にばらまかれた。直接的には責任はないのだが、彼は一人で回収にやってきたのだ。
 だがジュエルシードは想像よりも強力で、人の想念を取り込みあるいは生物に取り憑いて、化け物となって動き出していた。
 傷付き倒れた彼を助けたのがこの地の少女、高町なのは。魔力を持ち得た彼女はデヴァイス(発動体)を起動させ、魔導士として助けてくれている。
 これなら被害も少ないと安堵していると、フェイト・テスタロッサと名乗る少女が現れ、強引にジュエルシードを集めている様子。
 あれは危険な物なのだ。ユーノは危惧を隠せない。この人もあるいは敵かと思ったが、どうやらそうではないらしい。
「ユーノ君!」
 なのはの声に彼はハッと我に返った。考えている場合じゃない。あれは危険だ。年上とはいえ女の子が何をするというのだろうか。
 みればコトミネは何かを呟き、その手に剣を取りだした。
 デバイス? いや、何か違う気がする。それはともかく空戦魔導士だったのか?
 ユーノとなのはの視線の先で、薫は戦闘を開始した。

「ひとつ! ふたつ!! みっつ!!!」
 もはや問答無用と薫は黒鍵を投げつけた。それは火の鳥に突き刺さるのだが、平気な顔で飛んでいる。
 どういう訳だ? 薫は内心、訝しむ。
 魔術の作用原理である「歪曲・逆行」を打ち消す「摂理の鍵」が、なんだか作用していない? 手応えは普通にあるが、なんというか魔術的な手応えが軽いのだ。
 概念の呼び込みで強化している訳ではなくて、純粋に魔力で大型化しただけの動物なのか? 幻想種を模してるクセに訳が判らない。
 まあいい。それでも実体化して魔力を帯びていることには変わりない。ならばぶっ飛ばして打ち砕くまでのこと!
 緊急用にと用意していたルビーとサファイアを取り出した。それを手に持ち振りかぶる。
「一番、解放。氷獄神音(カノン・サファイア)」
 氷、支配、王権の概念を持つサファイヤの魔力が解放されて、粉雪のような氷が鳥の表面を覆い隠した。しかし、氷は次々とはがれ落ちていく。
「二番、解放。Intensive Einascherung. (我が敵の火葬は苛烈なるべし)」
 ルビーの魔力を導いて、遠坂の火炎呪文を叩き付ける。鳥はいななき大きくよろけた。
「三番、四番、連続解放。聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな」
 聖別、神秘、友愛の概念を持つロードライトガーネットの魔力は解放されて、それを薫は身に纏う。一時的に自身の数倍の魔力を手にした薫は強引にそれを収束させる。
「ハレルヤ!!!」
 それは魔力によるホーリー・ボルト(聖念擊)、本来は死霊・悪霊・吸血鬼への攻撃魔術。
 しかし効果はあった。火の鳥は輪郭を崩して消えていき、中からオレンジ色のインコかオウムが飛び出した。周囲を数回旋回し、そしてどこかへ飛んでいく。
 ……、思わず剣を投げそうになったが自制した。
 薫が呼吸を静めていると、青く輝く宝石が現れた。手に取ると強い魔力が感じて取れる。これがジュエルシードというヤツか。宝石魔術の礼装だろうか? しかし神秘を感じない。魔力があるのに神秘が薄いとはこれいかに? なんだこりゃ?

「凄い」
 思わずユーノは呟いた。
 コトミネと名乗った魔導士はデバイスを手にしていない?
 しかし氷結・火炎に魔力を変換、攻撃魔法に使って見せた。魔力変換資質を持っているのかもれないが、力のある魔導士らしい。
 その彼女がジュエルシードを摘んで観察している。拙い、欲しいなどと言い出されてはたまらない!
「待ってください! それをこちらに渡してください!!」
 叫ぶようなユーノの声に、彼女はこちらに振り向いた。何か考えているかのようで、少ししてから言ってきた。
「私の師匠は宝石魔術の大家「宝石のゼルレッチ」の弟子筋です。何でしたらこれは預かり、封印・管理も出来ると思いますがどうでしょう?」
「ゼルレッチ、ですか?」
 ユーノは首を傾げた。生憎と彼の知識にその名はなかった。大体「宝石魔術」とはどこの魔法なのかも判らない。戦いになれている様子からしてベルカ式なのかも知れないが。
 どうしたものかと困っていると、なのはが彼女に話しかけた。
「あの、封印なら私が出来ます。それは本当に危ない物なんです。お願いですから封印させてください」
 なのはが真っ直ぐに見つめている。

 お願いですっ! 薫に向かって、なのはという子が頭を下げている。
 どうしたものか。別に自分のものではないが、危険な魔術工芸品を小さな女の子に処理させるのも気が引ける。
「なのはちゃんと言いましたよね?」
 はい。と応える高町なのは。その瞳が必死さを告げている。
「なんか危ないものみたいなのですが、本当に大丈夫?」
 薫の問いに彼女はパッと笑顔になって、大丈夫です! レイジングハート! と杖に向かって呼びかけた。
 いぇす、ますたぁ。しーりん・もー。等と杖は応えて変形した。
 しーりんもー? 違う。シーリング・モード。封印形態か。そんなフォームを持つのなら、この礼装は魔術工芸品の封印礼装なのだろう。ならば大丈夫なのでしょう。
 薫がハイと手を出すと、ジュエルシードはふわりと浮かぶ。高町さんは杖を突きつけ呪文を唱えた。
「リリカル、マジカル。ジュエルシード、ナンバー〇〇封印!」
 ……。失礼ですが、その呪文はいかがなものでしょう?
 薫の心の声はさておいて、ジュエルシードはレイジングハートとかいう杖の宝玉に吸い込まれた。どうやら封印したらしい。
 何が何やら判りませんが、とにかく無事に済みました。
「さっきはありがとうございました。もう少しで卵を産まされるところでした。あっはっは」
 笑ってみるが、二人は顔を引き攣らせる。しまった、どうも外したようだ。恥ずかしいのでずらかろう。
「じゃ、そういうことで!」
「あ、はい」
「え、ああ、どうも」
 とまどう二人に向かって、すちゃっと手を挙げ、さようなら。
「「えええええっ!!!」」
 二人が何か言っていますが聞こえません。薫は加速し飛んでいく。

 少しして、海鳴市藤見町の高町邸に、なのはとユーノは帰宅した。
 抜き足、差し足、忍び足。家族に気付かれぬよう注意する。しかし居るのはなのはだけ。ユーノの姿は見あたらず、代わりにフェレットが彼女の肩の乗っている。
 部屋に戻るとなのはは振り向き、フェレットに問いかけた。
「ユーノ君、あのお姉さん、何だったんだろうね?」
「そうだね、ゼル……なんとかって言ってたけど、僕は聞いたことないみたいだ」
 フェレットとナチュラルに会話する女の子。実はこのフェレット、ユーノ・スクライアが魔法で変じた姿であった。遺跡発掘を生業とするスクライア族が得意とするらしい。
 二人は疑問をさておいて、回収を報告するため回線を接続した。

「その子は多分、この世界の魔法使いだったんじゃないかしら?」
 空中に映し出されたスクリーンに浮かぶのは、みどりの髪の大人の女性、彼女はリンディ・ハラオウン。時空管理局・本局に勤務し次元航行艦アースラの艦長を務める魔導士でもある。
 ロストロギア・ジュエルシードの回収任務に高町なのはとユーノ・スクライアという協力者を得て、これから本格的に活動しようと準備している最中だった。
「この世界にも魔法使いがいるんですかっ?!」
 驚くなのはにリンディは苦笑を浮かべた。
「何といったらいいのでしょうか? 私たちの使う魔法は魔法文明によるもので、例えるなら「機械仕掛けの魔法」です。もしなのはさんが会ったその子が魔法使いなら、その子は「夢見るように」魔法を使う、おとぎ話に出てくるような魔法使いかも知れません」
 そう言ってリンディは「ロマンですねぇ」などと言って、ほぅとため息付いて頬を赤く染めている。
「リンディ艦長、ここは管理外世界。魔法は存在しないのでは?」
 ユーノの問いにもリンディは笑みを崩さない。
「そうですね、しかしユーノ君。管理局が認識する魔法は文明化された魔法技術、あるいは魔法と見分けが付かないほど進化した科学技術です。心の力で夢見るように魔法を使う「幻想の魔法」は管轄外なんですよ」
 ああ、とユーノは納得した。自分たちが使うミッド・チルダの魔法は魔力素を利用した科学である。素質が必要とされるとはいえ万人に解放された技術であるとも言って良い。
 しかし太古の昔、人は神話や伝承といった幻想を喚起して、そこから力を得ていたと言われている。いわばそれは真なる魔法。科学に置き換えられる以前の幻想の魔法があれなのか。
 うわぁと感動するユーノとリンディ。その横で高町なのはは頭を抱えた。よく判らなかった様子です。

 その頃、件の言峰薫は電車の中で、シートに座ってぐうすか寝入っておりました。冬木に着くまでまだかかる。電車に揺られて薫はきっと夢を見る。


2008.7/4th
 風は空に、星は天に、輝く光はこの腕に、不屈の心はこの胸に!
 というわけで「魔法少女リリカルなのは」とのプチ・クロスオーバーです。魔法(魔術)の概念が違いすぎるだろう。正直、頭が痛かった。
 ……しかも半端に長いし。おまけにカレイドステッキ使わないのにこの内容、ありえない。orz.
 きっと薫は目を覚まして「あれはきっと夢だった」などと自分に言いきかせたりするのでしょう(笑)
「なのは」を知らなくてもそれなりに読めると思うのですがどうでしょう?
 続きません。念のため。

トップ 管理人プロフィール オリジナル小説 二次創作トップ ご意見感想掲示板 ときどき日記 メール リンク
inserted by FC2 system