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黄金のプチねた#31ふよふよ

 ーー 飛行魔術、術式”火の鳥”起動・展開 ーー

 祈りの姿勢の薫は呟く。すると背から微かに透ける赤い翼が広がった。左右に大きく羽ばたけば、金の粒子が振りまかれる。
 薫は組んでいた手をほどき、姿勢を正して床を蹴る。
 とんと小さな音がして、その体は宙に浮く。

 いち、にぃ、さん、し。

 薫は微かな笑みを浮かべて、静かに床に降り立った。そして、
「よし!」
 と、男らしく拳を握ってニヤリと笑った。

 そんな薫を見ていた凛は、ため息付いて首を振る。
 何でこの子は気合いが入ると男の子みたいになるのだろう。綺礼と戦う同志であるが、一部の教育については言峰綺礼と同盟を結ぶべきであろうか? いやいやキング氏と密約をかわして成果を出せば、パトロンゲットも夢じゃないかもしれないわ。
 言峰薫、女の子教育計画ver.7 などを考える遠坂凛の視線の先で、薫が再び床を蹴る。

 いち、にぃ、さん、し。

 やっているのは飛行魔術による浮遊訓練。世界の魔術基盤へのつながり具合と、世界の魔術基盤からの概念効果の引き出し具合。この二つを同時に制御し、飛行魔術の微妙な強弱を制御する。言ってみればアクセルワークの訓練だ。
 貯めた魔力をぶっ放す魔力放出とは感覚そのものが違うらしくて、薫はたいそう苦戦している。
 飛行概念の強弱の加減がまだまだ雑だ。いってみれば赤子のようなものだろう。
 赤子は手足をばたばたさせる。あれは力の加減が「入れる」「入れない」のオン・オフしかないからだ。成長するに従って力加減の解像度が精緻になっていくものだ。
 逆に言うと「関係ない」「ぶっ殺してやる」の0か100かしかないような人間は、心が成長できていないと言って良い。ガキにもなれずベイビーなのだ。きっと可愛くないけれど。
 それはともかく、薫は顔に汗を浮かべて頑張っている。
 まずは無理せず簡単なところから。などと言ってはいたけれど、空中浮遊を飛行魔術でやろうという時点で難しい。
 この前は天井に勢いよく頭をぶつけ、石造りの床に墜落したのだ。痙攣して意識が戻らぬ薫に驚き、思わず綺礼を呼びました。首の骨こそ折れてなかったようであったが、それでも霊媒治療をかけていた。危なかったかもしれない。

 凛が見守るその先で、薫がふよふよ浮いている。


2008.7/4th
 魔力放出は貯めた魔力の噴射による「物理的な加速」
 飛行魔術は概念を自分に作用させて「飛べないという事実を飛べるという幻想で歪める」結果、飛べる。などと考えてみたりしてます。魔法を科学っぽく説明する科学もどき魔法が多い昨今。幻想を大事にしよう(などと思ってます)

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