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黄金のプチねた#05 バレンタイン

 日本ではバレンタインデーに女性が男性にチョコレートを送ったりするのだが、薫は微妙なお年頃。しかし養父と王様が薫を逃がすはずもなく、シクシクと涙ながらにお菓子を作る。
 チョコのビターな味わいは、薫の涙で出来ている。
 しかし今年で三回目、いい加減に慣れてきた。そういう訳で薫は今年、ウケを狙って挑戦です。

 言峰教会居住棟、その食堂のテーブルに、薫がデザートを持ってきた。
 シチュー皿に載ったそれは白くて四角い立方体で、ホワイトチョコでコーティングされていた。
「カヲル、これは何だ?」
 ギルガメッシュは従者に尋ねた。この者ならば何か一捻りして当然なのに、面白くも何ともない。これならどこかの店で詰め合わせでも買った方がリッチで良かったではないか?
「これはお豆腐のケーキをホワイトチョコでフォンデュしたものです。そしてこれに、こうします。ふふふ」
 言って薫はチョコチップを振りかけて、更に上からレッドカラント(ベリーの一種)の真っ赤なソースを掛けた。
「麻婆豆腐お待ちーっ」
「「ワハハハハハ」」
 いい加減、薫も染まってきている言峰教会なのでした。
「ハハハハハ、カヲル、赤いというのに辛くないとは不届きなマーボーであるな! ハハハハ」
「あはははは、申し訳ありません王様。これは偽物なのです。偽物のマーボーは甘いのですよ(大嘘)」
「クククク、信じられぬ、まさかこの世にチョコで出来たマーボーが存在するとはな。魃さんに今度話してみるかな。おっと、タバスコを掛けてみよう」
「ハハハハハ。綺礼、我(オレ)にも寄越せ。ピリリとするのもいいかもしれぬからな」
「そんなっ! レッドカラント・ソースの酸味で充分いい感じだと思ったのに?!」
「そう言うな。どれ、お前の分にも掛けてやろう」
「ぎゃぁぁああ!!! 何すんですかおじさま! 私はチョコは甘いのがいいですからっ!!」
「何を言うかカヲル、これはマーボーなのだろう? それっ」
「あああああっ! 王様っ! 食べ物で遊ぶのはいけないことだと思いますっ!」
「たわけ、お前が作ったのであろうが。ハハハハハ」
「うー、辛いー、甘いー、チョコですー」
「「ハハハハハハ」」

 そして衛宮邸でもチョコの匂いが立ちこめる。
 衛宮切嗣は箱を手にして固まっていた。ふと気が付けば、玄関の中にケーキの箱が置かれいていたのだ。屋敷を守る結界に異常なし、つまり敵意を持った侵入者はいないはずなのであるが、これは一体誰が寄越した物なのか?
 リボンで抑えられていたカードを取り出し、開けてみた。

to: 衛宮切嗣様&衛宮士郎様へ。
from: K.K.

 ーー 罠だっ!!! ーー

 切嗣は断定する。これは罠に違いない。僕は騙されないっ! バレンタインデーなどという浮かれたイベントに見せかけた、これは凶悪な罠に違いない!!!
 おのれ言峰っ! 卑劣なりっ!! 僕はお前を許さないっ!!!
 彼が怒りにその身を振るわせていると、息子の士郎が顔を出す。
「うわっ! 親父、ケーキ買ってきたのか?! 凄いな、俺、爺さんはバレンタインなんか知らないじゃないかと思ってた」
 息子よ、それは無いんじゃないのかな。……切嗣パパは、ほんのちょびっと傷付いた。
「ええっ! 切嗣さん、チョコのお返しはホワイトデーですよ? もう切嗣さんてばフライング過ぎですよっ」
 そんなこと言う藤村大河、朝にチョコをくれました。そして士郎と大河は、サッとケーキの箱を切嗣の手から奪い取る。
「おおっ! 仄かに香るこの匂い、チョコレート&ブランデーケーキとみた! なんとリッチな! 切嗣さん開けていいですよねー」
 匂いで判る女子高生、大河が包みに手を掛ける。士郎もワクワク顔でそれを見る。
 だがしかし! 切嗣パパはダッシュで割り込み、ケーキの箱を奪って飛び退き距離を取り、二人に向かって言い放つ。
「待つんだ二人とも! これは罠だ!! これは危険な物なんだ!!!」
 真顔の切嗣に、子供二人は怪訝な顔になる。
「何言ってんだよ親父、ケーキ独り占めする気かよ?」
「ええーっ、切嗣さんケーキ好きなんですか?」
 ぶーぶーとむくれる二人に、切嗣は真面目かつ真剣な顔になる。
「違うんだ二人とも、これは君たちが思うような素敵な物じゃない! デンジャラスな悪夢をもたらす危険物に違いない。でも大丈夫だ。僕が責任を持ってこれを処分する! まかせろ!!!」
 笑顔で格好いいこと言ってますが、端から見るとケーキの独り占めを企むおじさんです。
「親父、大人げないぞー。俺もケーキ食べたい」
「切嗣さん、私も食べたいですー」
「違うぞ二人とも、これは違うんだ!!!」
 ケーキ争奪戦が始まる衛宮邸でありました。


あとがき
 ケーキを送ったのは薫ということで。
2008.2/4th

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