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終章 シーマ

 春分祭、神官騎士の叙勲式典。
 教会の礼拝堂には、パイプオルガンの緩やかな演奏が響き渡り、窓に飾られたステンドグラスからは神秘的な光が射し込んでいる。
 礼拝堂の正面には十字架が掲げられ、その横にある女神像は、優しい笑顔を集まった者達に向けている。
 また壁面には天使の像が翼を拡げ、人々を護っているかのようだ。
 神官長グラン・シーマは十字架を背にして、礼拝堂の奥にある祭壇の前に起立していた。
 彼女の正面、礼拝堂の中央には赤い敷物で道が造られている。その道の左右には青、赤、白、黒の神官騎士達が整列していた。
 赤い道の真ん中を、一人の少女がこちらに向かって歩いてくる。
 その少女はシスター達や、聖歌隊の少女たちと比べると背が低く、どんぐり目の可愛い顔は幼く見えた。
 だが真っ直ぐに前を向いた瞳は輝き、彼女の強い意志を感じさせた。
 そして優雅に歩くその動作は、長く伸びた栗色の髪を乱すことは無い。
 修道服の上に着込んだ騎士の長衣には、天使の翼、女神の横顔、光と風を象徴する十字架と剣が刺繍されている。
 少女の腰には儀礼用の剣が吊るされていて、それは道の左右で彼女を見守る、先輩の神官騎士達と同じ物だ。
 少女は一歩一歩前へと進み、神官長の前にたどり着いた。
「祈りを捧げなさい。シーマ」
 グラン・シーマに促され、ちっちゃなシーマは跪いて目を閉じた。

 シャムシエルを召喚したあの夜、シーマ達七人は全員ひっくり返った。
 次の日の、その次の日には回復したのだが、黒騎士カーメラにはさんざん怒られ、赤の騎士団、黒の騎士団からもお説教をくらい、神官長にも直々に注意を受けた。
 幸いにも神官長の指示で、懲罰室行きは免除されたのだが、当分の間は監視が付いてしまうらしい。
 死霊に精気を奪われたニータはなんとか命を取り留めた。しかし衰弱が激しく謹慎も兼ねて自宅に帰された。
 ロザリンドもまた、体調を崩して自宅療養のため学士寮から去っていった。本人はすぐに戻ってくるつもりらしい。
 アニタとマリエッタは割と早く元気になって、事務や仕事をこなしていった。
 リンダは多少やつれていたが、数日すると復活して、アニタやマリエッタに指示を出せるようになっていた。
 マーセラは体調を崩すことも無く、すぐに学士として元通りの生活に戻ったが、ノーマはショックを受けて修道院を去っていった。マーセラは少し寂しいらしい。
 シーマの神官騎士への推挙については、多少の物議があったが、騎士は与えられることとなった。
 ただしシーマの修道院での身分は見習い修道士のままとなり、前代未聞の見習い神官騎士ということになった。
 結局の所はジュリアの従者として、これから勉強しろとのことらしい。ジュリアは色々な所から、色々と言われてへこんでいる。

「シーマ」
 神官長に名を呼ばれ、シーマはゆっくりと目を開けた。
 祈りの言葉が読み上げられる。唱和される「かくあれかし」
 グラン・シーマが儀礼用の剣を抜き、シーマの肩の上に当て置いた。
「シーマ、貴女は真実を求めることを誓いますか」
「はい」
「善を行うことを努力すると誓いますか」
「はい」
「美しきを護ると誓いますか」
「はい」
「真・善・美、三つの真理の名において、汝に騎士を与える」
 シーマはこの日、騎士になった。

 式典が終わって外に出て、シーマは仲間に呼び止められた。
 アニタとマリエッタ、シスターとなったリンダ。
 そしてジュリアが立っていた。
「みんな!」
 シーマは皆に駆け寄った。
「シーマおめでとう!」
「おめでとうシーマ」
「ありがとうアニタ、マリエッタ」
「シーマ、これからもしっかりね」
「はい、班長!」
 もう少しで皆の所にたどり着くという所で、シーマの足が騎士の長衣の裾を踏む。
 シーマはこけた。
「きゃう」
 シーマが顔を上げると、仲間の顔があきれていた。
「……」
「……」
「……」
「あ、あの〜」
 気まずい雰囲気を感じたシーマが声をかけた。
「まぁいいか、行こう。ちっちゃなシーマ」
「よろしくお願いしますね、ちっちゃなシーマ」
「何とかなさいよ、ちっちゃなシーマ」
「うう〜」
 シーマはいじけた。
「一緒に頑張りましょう。シーマ」
 笑顔のジュリアが手を差し伸べてくれた。
 シーマはジュリアの手を取り、立ち上がって返事をする。
「はい!」


 天使が聖歌に舞い降りる。終





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あとがき

 主人公と仲間たち、良くがんばった! どいつもこいつも設定を超える暴れっぷりを見せてくれました。いや動く動く。
 ここまで読んでいただけているようでありがとうございます。
 いかがでしたでしょうか? 初めて書き上げた長編としてはまぁ良くできたと思うのですが。短編とは比較になりません。ええ。
 しかし書いてて思ったこともあります。例えば、

  登場人物、多過ぎた

 かなり後悔しました。まぁ、データベース作ってあったんで混乱したりはしませんでしたし、設計意図以上にキャラが動いてくれたので楽は楽でした(特にマリエッタ、君は真っ先に暴走してくれた)。
 このお話はこれで終わりですが、続編を書くとしたら舞台を街に移して「悪魔と呼ばれた少年」〜天使召喚vs悪魔召喚〜。などといったものになるでしょう。
 まぁ、書く予定は全然ないのですが、好評を得るようなら管理人が調子に乗って書くかもしれません。
 感想などいただけましたら大喜びですが、読んでもらえるだけでも十分です。これからも時々はオリジナル作品を書くつもりなので、また読みに来ていただけたら幸いです。

追記:七音小説工房は、サイト構造を判りやすくすることを心がけております。
 また、あくまで小説メインのサイトとして文章での描写にはげむ所存です。
 by管理人:七音(ななおと)

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