黄金のプチねた#126・宝石の酒
ごほんごほん。男が小さく咳をしている。
ここは教会奥の応接スペース、暖炉に火が燃え部屋の調度を仄かに照らす。
咳を収めた言峰綺礼に、言峰薫が寄り添った。
薫はグラスと広口瓶を手にしている。瓶の中には琥珀色の液体がたっぷりと入っていて、つまりこれはお酒である。
よく見ると、ビンの中には既にキラキラ光る透明なカタマリが多数入っているのだが、これは氷ではなく宝石だ。
琥珀(アンバー)である。
琥珀は太古の樹液が年月を経た宝石である。
世界有数の琥珀の産地として、ポーランドの地方都市グダンスクが挙げられる。そしてその地の伝統療法に、琥珀の酒が実在する。
琥珀を入れたびんに90度以上のお酒(スピリッツなど)を注ぐ。七日もすると酒が琥珀色に染まり、これが体を温め疲労を回復するのである。
心配そうに薫が渡したその酒を、しかし綺礼は美味そうにグビリとあおる。
もっとゆっくり飲んで欲しい。
拗ねる娘に父は苦笑し、チビチビと飲み直す。
並んで座る二人の向かいで、ギルガメッシュも酒を飲む。万年の時を溶かした宝石酒を舌の上で転がせば、ありふれた親子劇にも味わいが出るというものだ。
あとがき
琥珀の酒。分類:民間療法
琥珀の産地、ポーランドのグダンスクの民間療法。木の香りがしてウイスキーに似ているとかなんとか。飲んでみたいです。作ってみるのもアリかもです。
2011.12/12th