黄金のプチねた#125プールサイド
遠坂邸には、長辺十五メートルほどのプールがある。
水道代がもったいない。当主の意向で数年放置であったのだが、見たい・行きたい・入りたい、クラスメートはお騒ぎ。掃除をするなら使用を許す。そんな妥協を引き出した。
黒と緑に汚れたプールは青く綺麗に磨かれて、たゆたう水がキラキラ光る。そんな水面のプールサイドに、女子高生らがたむろする。
太陽の光の下で、言峰薫がバスタオルをマントのようにひるがえす。
さらされたのはスポーティーな競泳水着のワンピース。引き締まった彼女の身体の曲線を、それは優雅に描き出す。
薫は腕を頭上に伸ばし「うーん」と息を搾り出す。ほぅと小さく吐息も漏らし、浮かべた笑みがキラリと光る。
薫は腰に手をやり胸を張る。そして力強く宣言した。
「無駄毛の処理は完璧です!」
「何を口走っているかこの男女は!!!」
「ぶべっ?!」
言峰薫はプールに蹴り落とされた。顔面落ちである。
見事な前蹴りを叩き込んだのは美綴綾子、彼女は拳を震わせている。
薫は水中で姿勢を整え、ぷかりと頭を水から出した。
「女の子にはムダ毛は生えない。私にも、そんなふうに思っていた時がありました。ぶくぶく」
「おい遠坂! コイツ沈めてもいいな?! いいよな」
「ありがとう綾子。薫にツッコミを入れてくる人が増えた。こんなに嬉しいことはないわ」
美綴綾子がプールに飛び込むのを見送って、遠坂凛は目尻の涙をそっと拭った。
あとがき
管理人(私)にも、そんなふうに思っていた時がありました(遠い目)
2011.12/12th