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黄金のプチねた#124サーメット

「どうぞ遠野さん。これは差し上げます」
 三咲町、とあるマンションの一室に遠野志貴と言峰薫が座っている。
 ささどうぞ。薫は正座しながら小箱をすすっと差し出した。
 ややこれはどーも。志貴は受け取り開けてみる。中身は黒光りする短剣だった。
「薫ちゃんこれは確か」
「はい。ネロ・カオスと戦った時にお貸しした短剣です。金と宝石の短剣はあげられないのですが、こちらを感謝の印と一振り差し上げます。あ、刃物が嫌いとかこれ以上魔術に関わりたくないとかでしたら別の形でお礼しますよ。それマジックアイテムなので」
 どうします? 首を傾げる女の子に、遠野志貴はありがとう、これでいいよと微笑んだ。
「それは良かったです。では短剣について説明を」
 薫はコホンと咳払いをしてみせた。
「この短剣はサーメットといういわゆる超合金で出来ています。チタンとニッケル、あとコバルトなんかの合金ですね」
 チタン合金ってやつだろうか。志貴はふーんと頷いた。
「サーメットとはセラミックとメタルの合成語でして、セラミックより靭性、つまり粘り強さが強い素材です。鋼鉄の切断工具に使われています」
 へぇー。鋼鉄を切るなんて凄いんだ。志貴はナイフに目をやった。鈍い輝きの刀身はとても頑丈そうだ。
「つまりです。この素材は『鋼(刃金)殺し』なのです。刀剣や鉄の鎧を切り裂く武装破壊の魔術礼装として作ったのですが、魔術師は剣や鎧で戦わないから使わないなと。えーと、とにかく頑丈ですから使って下さい。完成品の魔剣なので魔力とか注がなくても普通に使って平気です」
 薫が使う武器の多くは、一般人には使えない。このダガー(両刃短剣)は例外だとか。
「ありがとう。使わせてもらうよ」
 吸血鬼によって放たれた死者(デッド)達は未だ街にいるらしい。魔法の武器はありがたい。
 しかし志貴が視線を上げると、言峰薫は申し訳なさそうに身を縮めていた。
「本当なら遠野さんには手を引いてもらい、私たちが頑張るべきなのですが、少しでも被害を小さくするためにどうか協力して下さい。ごめんなさい。でも、ありがとうございます」
 彼女は深く頭を下げる。遠野志貴は苦笑した。
「気にしないでいいよ薫ちゃん。俺は自分でやりたいって思ってやってるから」
 はい。少女の顔に笑みが戻った。それだけで遠野志貴は満足してもいいだろう。
「それでですね!」
 先程までの面持ちは何だったのか。キラキラした目で薫はズイっと身を寄せた。思わず身を引く遠野志貴。
「このサーメットという素材なのですが、実は『超電磁ロボ・コンバトラ〇V』の装甲と同じものだったりします」
「何ィッ!!!」
 志貴は色めき立った。当然である。その名を聞いて冷静でいられるはずがないではないか!
「そしてもう一つ。同じくサーメットのヨーヨーなんかもあるわけで」
 ふっふっふ。懐から黒光りする金属製のヨーヨーを取り出して、言峰薫は楽しそう。
「うっ?! それは!!!」
「クックック。当然プレゼントします。あ、これはタダのヨーヨーですよ」
「ありがとう」
 志貴はサーメットのヨーヨーを手に入れた。頼もしいほどの重量感。無敵の力があるような気さえする。胸が高鳴る。そうです。遠野志貴も男の子。
「では志貴さん。ブイブイいってみましょうか」
「薫ちゃん、そこはブイ・ブイ・ブイだよ」
「あっはっは。判ってますね!」
「当然さ!」
 ちゃらっちゃら、ちゃーちゃっちゃー、ちゃらっちゃら、ちゃっ・ちゃー♪
 志貴と薫はぶいぶい言いながらヨーヨーで遊びだした。


あとがき
 サーメットは実在する素材で、本当に鋼鉄の切断などに使われます。
 超電磁ロボ・コ〇バトラーVの装甲に使用されている設定は本当にありますヨ。
 ただし『超電磁ヨーヨー』はサーメットではなく超合金アルファという良く判らない金属らしいですが(笑)
2011.8/31th
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