黄金のプチねた#117アリストテレス

　────　今日のニュースです。長らく不明だった天然うなぎの産卵場所が発見されました。これにより　────

「凛、ニュースを見ましたか？　とうとうウナギの産卵場所が見つかったそうですよ」
　目を輝かせる言峰薫に遠坂凛は苦笑した。なぜにそれほど嬉しいのか、この子の気持ちが判らない。
「何を言っているのですか。ウナギの産卵場所は神話の時代から謎とされ、かのアリストテレスでさえ『ウナギは泥の中から発生する（つまり判らない）』と言葉を残しているのですよ！」
「そうなの？」
　アリストテレスは古代ギリシャの哲学者。プラトンの弟子であり、超現実とされていたイデアを現実に内在すると説いた賢者である。
「自然学」「動物誌」「形而上学」その他にも優れた書を記し、古代で最大の学問体系を樹立した大賢者だ。
　アリストテレスを以てしてもその秘密を暴けないとは、やるわね！　天然うなぎ!!
　などと凛はノッてみる。
「そこで私は考えたのです」
　言峰薫はフフンと笑う。
「泥に『うなぎ』の概念を働かせ、泥んこウナギのゴーレムを召喚するのはどうでしょう」
　宝石を投げる。すると泥の中から大量のウナギがニョロニョロと……。
「やめておきなさい。絶対制御に失敗してひどい事になるから」
　言峰薫は火属性。水属性の宝石を使っても、高度な降霊・召喚魔術を執行するには素質が足りない。
「判りました。ではアイデアを提供して慎二くんと桜ちゃんに」
　間桐慎二と間桐桜、二人がウナギまみれになっているのを助ける様子を想像する。そしてミイラ取りがミイラになるのだ。
　「それもやめて。凄いことになりそうだから」
　さすがにウナギまみれは嫌だった。

・うなぎ召喚。分類：降霊魔術？
『ウナギは泥の中から発生する』という観念には千六百年の歴史がある。これを利用し、泥を媒介にウナギを泥のゴーレムとして物質化させ使役する。
　多分、敵味方問わずひどい目（エ〇ゲー展開）にあう。