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黄金のプチねた#98奉行様

 ぐつぐつお鍋が煮えている。
 白菜・豚肉・鶏肉に、干し椎茸に焼きビーフン。水炊きの湯の中で、具材たちがぐらぐら踊る。
「王様、どうぞお召し上がり下さい」
 小鉢に具材をてんこ盛りにし、薫はギルガメッシュに手渡した。お塩と七味でいただきます。
「王の食事にしては簡素だが、これはこれで美味いな」
 器用にお箸を使いこなして、ギルガメッシュは肉と野菜を平らげる。
「日本は四季折々に様々な食材が手に入りますからね。旬の物を風味を損ねずいただくにはシンプルな調理法が一番です。季節も四つだけでなく、古来は二十四節気で暮らしていたのです。つまり、日本は季節が二十四ある国なのです」
 立春・雨水・啓蟄・春分・清明・穀雨。立夏・小満・芒種・夏至・小暑・大暑。立秋(中略)立冬(以下略)。
 それぞれの旬の食材を、美味しく頂ける国なのだ。
「ほう、なるほどな。確かにこの国では十日も経てば風の匂いが変わる。それは我(オレ)も感じていたところだ」
 言って彼は己の従者に小鉢を突き出す。おかわりである。

 お鍋に具材を追加する。ぐつぐつぐつ。

 もういいかしら? 薫がそっと取り箸を伸ばすと、────。
「まだ早いっ!!!」
 ギルガメッシュが一喝する。その視線は力強く、鋭かった。
「アーチャーにして王の中の王たるこの我(オレ)の目は火の通り具合を見逃さぬ。カヲル、白菜の煮え具合がまだ甘い。待つのだ!」
 真剣な顔のギルガメッシュ。その威厳、まさに王者。
「あー、王様。鍋料理はその辺ファジーにいって平気だと思うのですがどうでしょう?」
「何を抜かす?! 貴様も我の従者なら煮え加減を見逃すな」
「はいはい。了解です王様」
「馬鹿者! はい、は一回だ」
「はい! 申し訳ありません王様。さて、煮えたようなのでお肉と野菜と……」
 てんこ盛りにして手渡す薫だった。


あとがき
 きっと奉行なのです。
2010.1/25th

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