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黄金のプチねた#93ブーメラン

冬木市新都、冬木教会。その裏手の開けた土地に、ロープを巻いた丸太が突き立てられていた。
 その丸太を見詰める少女が一人。距離を取り、しかし見詰めるその目は冷たく鋭い。
 少女、薫は両手を翼のように左右に広げた。その手には、くの字型の細い鋼板。黒く塗られたブーメランが握られている。
 ぐっと拳の握りに捻りを加えると、ブーメランの影が左右一対から三対に、つまり六枚へと変化した。
 魔鳥が今にも舞い上がらんとするかのように、薫は左右の翼に力を溜めて。
「飛べっ!」
 腕で羽ばたき刃物を飛ばす。まず一対(二枚)、左右に飛んで弧を描く。
「いけっ!!」
 さらに羽ばたき刃物を飛ばす。もう一対(追加で二枚)、やや上に飛んで斜め上から丸太に向かう。
「集い! 囲み!! ついばめ!!!」
 最後に薫は左右の刃物を振り上げ突進し、ブーメランで丸太に斬り付ける。
 その瞬間、先に投じた四枚のブーメランが丸太を囲うように飛来する。

 六枚の刃(ブーメラン)が同時に丸太に炸裂し、人の胴ほどの丸太は砕けて折れた。

 薫はブーメラン、太極・比翼・鳥の概念を以て軌道を操る魔術礼装を手に取り、ため息を一つつく。そして残念そうに呟いた。
「ダメだ。かさばるわりに使えません。くそぅ、投影に適性が低いのが痛いなぁ」
 聖典紙片(黒鍵もどき)でいーや。
 そう言って、後片付けを開始した。


あとがき
 ブーメランカッター。分類:魔術礼装(試験品)
 二枚一対 x 3 の六枚セットの魔術礼装。飛行軌道コントロール試験品。
 鋼板で出来ているので強化すれば聖典紙片より頑丈。
 なのだが、でかい。かさばる。黒鍵連投でいいじゃん。マシンガン強いよ。などという薫の嗜好によりお蔵入りとなる。
2010.1/14th

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