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黄金のプチねた#81科学&錬金術

 祭壇の暖炉の奥で、全てのススキが燃え尽きた。
 遠坂邸の地下工房、凛と薫は肩を並べて暖炉の灰をかき出して、それを陶器のボウルに移す。
「これだけあれば充分でしょう。薫、こっち持ってきて」
 うなずく薫が手にしているのはラーメンどんぶりサイズのボウルである。それを床に描かれた魔法陣に配置する。
「じゃあやるわよ薫。“火の鳥”出してちょうだい」
「了解です、凛」
 言って薫は背から赤い炎の翼を広げる。遠坂凛と言峰薫の魔力を受けて、魔法陣は「火」の魔力に赤く染まった。

「「 ——— (セット)Anfang(告げる) ——— 」」

 長文呪文詠唱(テンカウント)による魔術の実験が始まった。


 〜〜 1時間ほど経過しました 〜〜


「へぇー。ちゃんと出来るもんですねー」
 そう言って薫がつまみ上げたのは小さなガラス玉だった。
 植物の灰には金属元素であるカリウムが多く含まれる。灰に含有されるカリウムの化合物、炭酸カリウム(パール・アッシュ:真珠灰とも言う)を水晶(二酸化ケイ素)と一緒に高温で混合融解するとカリウム・ガラスが出来るのだ。
 古来、ガラスは宝石だった。古代エジプトでは宝飾品として珍重されて、王族の衣装に飾られた。
 今回の魔術実験は、そんなガラスを魔術的な加工で作ってみようとの試みだ。
 現代では炭酸ナトリウムを使用したナトリウム化合物としてガラスを作るのが一般的で、作るのも簡単で品質も安定する。
 しかしそこは遠坂凛も弟子の薫も宝石魔術師。本来は1250℃もの高温で、2時間は融解させなければ出来ない加工を魔術で代用。化学の知識を利用しつつも、錬金術的な方法で植物からガラスを精製したのだ。
「薫、どう? 錬金術は科学の母体。科学も魔術も極めれば同じ。だけど私たち魔術師は、未来ではなく過去へと逆行する。色々と判るんじゃないかしら」
 こっこり笑い、指を立て、凛はすっかり先生モードだ。
「なるほど、判るような判らないような」
 薫はガラスを照明の光にかざす。灰の中から生まれたガラスという名の宝石が、光を受けてキラキラと輝いた。


あとがき
 科学ではなく化学ですね。
2009.7/4th

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