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黄金のプチねた#78歌姫

 給食をやっつけて、遠坂凛は教室を後にした。廊下を進み角を曲がってあたりを見渡す。
(誰もいないわね。ヨシッ)
 五時間目の授業の場所たる音楽室に忍び込む。昼休みなのもあり、中には誰もいなかった。さらに凛は奥へと進み、準備室へと侵入する。楽器などが置かれたそこは、空気が淀み薄暗い。
 やおら凛は鞄から箱(パッケージ)を取り出し床に置く。そして箱を囲むように宝石を配置した。
 立ち上がった凛は唇をかみ締めて、硬い決意で視線を細くとぎすませた。

 そうだ、遠坂の家訓を守るため。手段を選んでいられない。

「———— Anfang.(セット)」
 左腕の魔術刻印が光り輝き鳴動し、床の宝石もまた光を放ち魔法陣を描き出す。そして中央のパッケージが光を受けて照らされる。
 凛はクッと口をかみ締める。魔術は秘匿するもの隠すもの。それは判っているのだけれど、これもあの子に勝つためなのだ。追い詰められた遠坂凛は、もはや手段を選ばない!
「———— 降霊術(セアンス)憑依降霊(ダウンロード)」
 パッケージを触媒とし、描かれた人物の影(シャドウ)が立ち上がる。神秘の魔術の力を借りて、魔術師は「歌姫」の力を手に入れる。
「———— 初〇 ミク(ボーカロイド)!!」
「あほかぁぁぁぁあああ————っ!!!」

 ———— すぱーん ————

「何するのよ薫、痛いじゃない」
 いつの間に現れたのか、言峰薫がスリッパを手にして立っていた。ビニールスリッパには「斬鉄剣」などと書かれているが概念付与(イデア・エンチャント)はされていなかったようだ。
「凛、貴女は何をするつもりですか」
「だって、歌のテストにもう失敗するわけにはいかないのよ。遠坂的に」
「だからといって魔術を使わないでください。しかも致命的に選択ミスです」
「そうなの? でもこれがあればパソコンも歌い出すって店員さんが言ってたわ」
 違うの? と首を傾げる凛。薫はあははと笑います。
「嘘ではないですけど、これは違うと思うのです。危なかったですよ凛、これを憑依降霊(ダウンロード)などしたら、アイドル(晒し者)になるところです」
 遠坂のうっかりスキル、恐るべし。などと思いながら薫は冷や汗をぬぐい取った。


あとがき
 みっくみくにしーてあげるー♪ 良いソフトだと思います(持ってませんが)
2009.6/30th
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