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黄金のプチねた#77妖精と雪だるま(アインツベルン氷雪結界攻防戦アレンジ)

 切嗣に呼び止められた。
 なんだろうと薫が振り向くと、彼はアインツベルンの城壁沿いに顔を向けている。
 その先にあったのは、見上げるような大きさの灰色の塊だった。塊、すなわち巨人が巨大なスコップで雪を掘り、道を作っているようだ。
 そしてその傍らで、防寒服に身を固めた少女が雪だるまを作っている。いくつもの雪だるまが、地蔵の様に立ち並ぶ。そんな光景が生まれていた。

「イリヤ?」
 切嗣は少女に呼びかける。少女は振り向き、巨人に「指示があるまで 動かないで」と命令する。
「お爺様から、来ることを聞いています」
 切嗣とイリヤスフィールは向かい合う。

 その後ろで、言峰薫は巨人を見上げる。「動くな」その命令、確かに聞いた。
 ビッグチャンスだ。
 その筋肉を確かめる。ぺたぺたと、湯気の上がる巨人の体に触れてみる。熱を持ち、膨れあがった腕の筋肉。
 ……なんというアニキ(はぁと)
 目にハートマークが浮かぶ薫である。ちなみに巨人はただならぬ気配でも感じたか、主たるイリヤへ視線を送るが彼女は気付いてくれません。

 イリヤスフィールは 言葉を続ける。
「お爺様から、来たら巨人と戦わせ、倒せたら連れて来いとの指示を受けています」
「ずいぶんと他人行儀なんだな」
 切嗣は悲しげに呟いた。

 その後ろで、薫は巨人の体をペたぺたと触りまくり・なでまくりです。そして巨人は動けません「動くな」命令、実行中。

「仕方ないでしょう。……迎えに来ないんだから」
 殺意を浮かべながらも、ぷいとむくれるイリヤ。悲しくはあるが切嗣は同時に嬉しく思う。
 待っていてくれたのだ。しかし帰ってこれはしなかった。そんな自分がふがいない。

「これは何というナイス・アニキ」
「くっ、この腕力が私にあれば」
「背筋のたくましさ、それが打撃の……」

 後ろで何か言ってるが、聞こえない。聞こえないんだ。イリヤ、いい子だから見ないようにね。
「わーい」
「#$%&$$%#‘&%“!”」
 ついに悲鳴が上がる。勘弁してくれ。いやいやながら後ろを向いた。そしてあんぐり口を開けることとなる。
 俯せとなった巨人の背に薫がまたがり、撫でていた。
「この広背筋、この広背筋がっ!!」
 彼女の瞳が輝いているかのようだった。
「……キリツグ、あの子、なに?」
「……魂は男、とか言ってたなあ。巨人君はその辺、耐性ないのかな」
 耐性? 首を傾げるイリヤスフィール。イリヤ、判らなくてもいいんだよ。ああなっちゃいけないよ。
 切嗣は薫に近づき、ハリセンを取り出した。

 ———— すぱーん ————

「痛いじゃないですか?! 切嗣さん」
 薫ちゃん、黙ってて。ええとイリヤ、巨人は倒せばいいんだよね。倒れてるからいいよね、これ。
「ええーっ?!」
 はいはい、むくれないむくれない。可愛い顔が台無しだぞ。
「ええーっ。ずるい! キリツグずるいよ。何か違うーっ?!」
「すみませんね。イリヤスフィール」
「薫ちゃん、黙ってて」
 すぱーん。
「切嗣さん、私の扱い。ちょっと酷くないですか?!」
 やかましい。娘の前で変なことをしないで欲しい。
「いやですね切嗣さん、男受けなんて腐女子の間では常識ですよ」
 ごすっ。
「ねえキリツグ、あの子、めり込んでるけどいいの?」
 いいからいいから、イリヤ、いい子だからあの子の言うことは覚えてなくていいからね。
「ちょっとそこの従業員!!! 日本人勤労の美徳を教えてあげます。そこになおれ」
 上等だ。僕も君に女の子の正道を教えてあげよう。

 〜〜 小一時間ほど経過しました 〜〜

 ホムンクルスのメイドが現れ「アハト翁との謁見を許す」と伝えてきた。取り敢えず、切嗣と薫は議論を中止する。
 そんな二人に雪の少女は改まって一礼した。
「ようこそアインツベルンへ」
 そしてイリヤは切嗣に抱きついて「抱っこして連れて行きなさい」と雪が溶けるような笑顔を振りまいた。


あとがき
 活字スキーさんから頂いたものを魔改造していまいました。反省。
 巨人の心理描写を書いたものもいただきましたが、それは個人的に楽しませてもらうに留めます。
 人外や突き抜けた悪役、超存在などは内面の描写をするとどうしても嘘臭くなるので(管理人(私)の能力が足りないともいふ)外面を描写するに留めた方が無難かつ適切と考えます。
2009.6.6th

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