黄金のプチねた#73花言葉
教会の裏手で薫は今日は草むしり、暖かくなってきて、ぺんぺん草も伸びてきた。
ぺんぺん草は春の七草「ナズナ」の俗称、摘んでいって雑炊にでもしてみるか? おひたし、いや、天ぷらがいいか。
思考を巡らしながら続けていると、今日は小さなギルガメッシュが通りがかった。
特に何をするわけでもなく、こちらを眺めているようだ。目に映る度に直立不動を義務づけられている訳でもないので作業を続ける。
ふとみると、ギルガメッシュもぺんぺん草を摘んでいた。
「カヲル」
「何でしょうか王様」
「ボクにこれを渡してくれませんか」
ニコニコしているギルガメッシュ。これというのはぺんぺん草? 何故に? まあしかし、王様の言葉に逆らうつもりはありません。良さそうなのを見繕う。
「待て」
気が付くと、綺礼がいて声を掛けてきた。
「薫、お前はナズナの花言葉を知っているか」
「花言葉ですか? いえ、知りません」
「ナズナの花言葉はな「あなたに全てを捧げます」だ」
———— ひゅぅぅぅぅうううう ————
ニコニコしているギルガメッシュ。笑みを湛えた言峰綺礼。そんな二人を前にして薫は……。
聖典紙片を引き抜きナズナを巻いて、ギルガメッシュに差し出した。
「どうかお受け取り下さい。我が王よ」
笑顔のままで、ギルガメッシュは受け取った。
「おじさま、おじさまもどうぞ」
薫は綺礼にも差し出した。
「お前はそれでいいのか?」
言峰綺礼のつぶやきに、言峰薫は頷いた。
私はこの教会で、最後まで行くと決めている。
あとがき
ぺんぺん草も侮れません。
2009.5/15th