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黄金のプチねた#50少年と別れの言葉

「お祖父さん、お祖母さん、もう行くね」
 ウェイバーのその言葉に、マーサお祖母さんが残念そうに彼の腕から手を放す。
 ウェイバーは旅に出る。この冬木には一年近くいた計算だ。思ったよりも長くいた。長くいてはいけなかったはずなのだが、出て行くことが出来なかった。
 おかげで寿命が縮むような思いもしたが、代わりにお金はたんまり貯まった。おかげで明日から旅の空。故郷イングランドに直帰はせずに、色々世界を見て回る。
「ウェイバー、体に気を付けてな」
 グレン老人が心配そうに声を掛けてくる。大丈夫、自分は冬木で強くなった。身長だって少しは伸びた。経験と体験を積んで大人になった。
 グレンからもらった旅行鞄はパンパンに膨らんで、ウェイバーはそれを持ち上げる。首にはマーサのマフラーを巻き付けて、冷たい風から身を守る。腕に巻いた金ピカな腕時計が、別れの時を告げていた。
 呼んだタクシーに乗り込んで、彼は小さく手を振った。
 マーサお婆さんが再度近寄り、ぎゅっとウェイバーの手を握る。何度も繰り返されたその行為を、しかしウェイバーは止めろなどとは言えなかった。すこしして、お婆さんは手を放す。そして小さく呟くように、彼にそっと言葉を贈る。
「ウェイバーちゃん(リトル・ウェイバー)いいえ、ウェイバーさん(ミスタ・ウェイバー)……ありがとう」

 え?

 グレン老人がマーサの肩を抱き寄せた。二人とも涙を浮かべ、そして笑みを浮かべてこちらを見ている。
「あ、ああ、あああ」
 ウェイバーの視界が濡れていく。彼はドアの縁を掴むが、何を言ったらいいのか判らない。
「ウェイバーや、また来ておくれ」
 グレン老人はぐっと親指を突き出した。
「また来ます! また来ます!! また来ます!!!」
 動き出した車の窓から、ウェイバー・ベルベットは手を振った。

 ちーん。
 横からティッシュが差し出され、ウェイバーは鼻をかむ。
「いい人達でしたね」
 やかましい。というかオマエ、いつまでボクを監視しているつもりだよ?!
「あー、ばれてましたか? マッケンジーさん達に掛けた暗示が酷いものなら、痛い目にあってもらうつもりだったんですけどね。でもこれは予想外です。先生はなかなか人徳がおありになりますねー、って待ってくださ、ふぎゃっ」
 生意気な少女に一発喰らわせ黙らせる。恨めしそうにこちらを見上げる視線を無視し、一年過ごした冬木の街に目をやった。
 言葉に出来ない多くのことをここで学んだ。ここで知った。あり得ないものまで手に入れた。それには形はないけれど、かけがいのないものばかりだ。

 少年はものを知らない非力な子供だった。それに耐えられなくなった時、子供は大人となり、強い大人になるために、世界に一歩を踏み出した。


あとがき
 ウェイバー・ベルベット五部作。これはさすがにフェイト/ゼロを読んでないと判らないかと思います。色々いじったんですが、これが今の限界みたいです。無念。ま、これも挑戦の記録ということでどうかひとつ。
2008.9/25th

プチねたのおまけ:マッケンジー家の人達
・ウェイバー・ベルベット Waver Velvet
 身長157cm・体重50kg・血液型B。10月3日生まれ、第四次聖杯戦争では19歳。
 サーヴァント・ライダー、イスカンダル(アレキサンダー大王、イスカンダル双角王)を召喚したマスター。
 当時は時計塔で学生をしていた未熟な魔術師。令呪は右手の甲に出現した。英語しか喋れない?

・グレン・マッケンジー
 マーサ・マッケンジーの夫。
 冬木市にはカナダから出張で訪れ、気に入って移住した。家の屋根の上で星を眺めるのが好き。
 第四次聖杯戦争の際、ウェイバー・ベルベットにより彼が自分の孫であるという暗示をかけられ。しかし途中からウェイバーが本当の孫ではないと理解していた。だがウェイバーとライダーの素性や目的を詮索せず、しばらくこのままでいて欲しいと頼み、聖杯戦争終了後もウェイバーの逗留を黙認した。

・マーサ・マッケンジー
 グレン・マッケンジーの妻。耳が遠い。高いところは苦手。
 第四次聖杯戦争においてウェイバー・ベルベットにより彼が孫であると暗示をかけられた。聖杯戦争が終結した時点でもウェイバー・ベルベットが実の孫だと思い込んだままで、彼がしばらく家にとどまることを喜んだ。

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