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黄金のプチねた#49少年と苺のケーキ

 ウェイバーがマッケンジー邸に帰ってくると、パンパンと音が弾けて細かい何かが飛んできた。部屋は暗く、しかし数人の人影が見て取れる。
 何ごとだ?! ついに奴らが襲ってきたのか?! お祖父さん、お祖母さん、ボクと一緒に逃げるんだ!!!

「「「Happy birthday! to you. はっぴ・ばーすでー、でぃぁ・うぇいばぁ。ハッピーバースデー、トゥーユー」」」

 ……どうやら最悪の事態ではないらしい。

「……well, 何?」
 小さな灯りがつけられて、リビングを見渡すとそこにいるのはお祖父さん&お祖母さん。そして何でオマエがここに居んだよコトミネ・カオル。
 ウェイバーは頬をピクピクさせるが少女はマッチでロウソクに火を付けている。改めて見てみると、テーブルには色々料理が並んで置かれてあって、ロウソクはケーキに刺されて立っていた。
「見れば判るでしょう? ウェイバー先生。今日十月三日は先生の誕生日なのでしょう? だからこうしてサプライズ・パーティーを企画立案してみました」
 そう言いカオルはケーキをずいっとこちらに押しやった。
 白くて丸いケーキの上に、妙に巨大なストロベリーが並んでいる。イギリス育ちのウェイバーはラズベリーやブラックベリーには馴染みがあったが、日本の巨大な苺には馴染みがなかった。毒々しいまでの赤い実は、まさか魔術の加工品?!
「先生、何をおののいているのか知りませんが、日本ではケーキといったら苺のケーキが基本かつ王道なのです」
 腕を組んでうんうんと頷く日本人の女の子。そうなのか? いや、それはいいけど誕生日?
「履歴書に書いてありましたよ? 普通に」

 —— Oops ! (うーぷす:しまったぁぁぁあああ) ——

 正直に本当のバースデイ書いちまったか?! ああ、ボクのバカ馬鹿ばか。
「さあさあウェイバーちゃん。こっちこっち」
 マーサお婆さんがニコニコ顔で彼を引っ張り、テーブルの正面に座らせる。お爺さんがハッハと笑い。言峰薫も笑みを浮かべる。
 乞われるままにフッと気を吐き火を消せば、パチパチパチと拍手がなった。そして3人はプレゼントを手渡した。
 頑丈な旅行鞄、手編みのマフラー、金ピカな腕時計。
 ……誰がどれかは秘密である。
「ふふふん。ウェイバー先生、顔がにやけてますよ。ふぎゃっ?!」
 生意気な子供にはデコピンをくれておく。
「ええい! 人のおでこを何度も何度も!! 今日という今日はお返しして、ふぎゃっ?!」
 甘い。ボクにデコピンしたかったら最果ての海(オケアノス)まで行ってこい。
「行けるわけ無いでしょうぅぅぅううう!!!」
 カオルが顔を赤くしていきり立っている。彼はそれを軽く受け流す。

 行けないなんて事はない。

 なぜならば、彼にとって、そして共に駆けたあの男にとって、この地こそ目指して駆けた「最果ての海(オケアノス)」であったのだ。


あとがき
 最近のイチゴの巨大さには驚くばかりです(違う)
2008.9/25th

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