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黄金のプチねた#47少年と小さな王様
冬木教会礼拝堂。そこには青年が一人で立っていた。彼はウェイバー・マッケンジー。
英会話を教えるアルバイトの面接(?)に来たのだが、祖父が綺礼神父に話があるといって連れて行ってしまった。おかげで彼は待ちぼうけである。
ウェイバーは礼拝堂のベンチに腰掛けた。西洋人である彼であったが、礼拝堂に来るなど何年ぶりかも思い出せない。随分と子供の頃に、母に連れられ来たような記憶もあるにはあるが、一体いつだか判らない。
そんな自分が極東の日本で教会に来るとは思わなかった。
「……って、違うだろ!!!」
立ち上がって周囲を警戒。敵は何処に潜んでいるか判らない。ミッション・スタート! 何としてでも生き残れ!!
Oh! Snake.My master.
よく判らない師匠に祈りを捧げ、彼はベンチの陰に身を隠す。出口のドアまで十メートルと少しある。
シット! どこかにダンボール箱はないのだろうか?!
伏せるようにして辺りを見るウェイバー。そこに声が掛けられた。
「何をしているですか? お兄さん」
うぉーにんっ!!! 発見された! ただちに攻撃に移行せよ!! らじゃー!!!
ウェイバーは心の中で作戦を変更し、声を掛けたものに視線を向ける。
そこにいたのは子供だった。日本では滅多に見ない本物の金髪で、紅玉を思わせる真紅の瞳の少年だ。Tシャツの上にパーカーを引っかけたカジュアルな服装をして、笑顔でこちらを見つめている。
この子が英語を教えることになる子供だろうか? いや、こいつ絶対に日本人じゃないだろう。
「貴男にならカヲルを任せても良さそうですね。ボクのカヲルにしっかりと教えてやってくださいね」
そういい少年はニパッと笑う。カヲル。どうやらその子が生徒になるらしい。しかしコイツ、微妙に日本語(言ってること)おかしくないか?
考え込んだウェイバーが我に返ると、金髪紅眼の子供は目を細め、口元にふふんと笑みを浮かべて。
「お兄さん。……ボクが誰だか判りませんか?」
そんなことを聞いてきた。
判るも何も、ウェイバーは綺礼がマスターだったことさえ知らないし、璃正神父が死んでいたことも知らなかった。ここに生身で来るのも初めてだから、こんな子供を知るはずが……。
「判りませんか?」
—— ゾッとするような冷たい視線。その赤い瞳の輝きに、思い出されるものがある ——
「なっ! オマエ!!! !”#$%%&’()0=〜¥」
尻餅をつきそうになるのを何とかさけた。逃げ出しそうになるのも必死に抑え、泣き出したくなるのも死ぬ気で堪える。
顔色を青くし冷や汗まみれになったウェイバーを、しかし黄金の少年は嘲笑うことはなく。満足そうに頷いた。
「うんうん。やはり貴男は悪くない。その在り方、カヲルにも見習わせたいものですね。しっかりと頼みますよ」
ふふふと笑い、子供は教会の奥に消えていく。その姿が見えなくなってから、ウェイバーはベンチに崩れるように座り込んだ。そして祈るように手を組んだ。
「……逃げたら、ダメ、だよ、な?」
その手は細かく震えていたが、震える拳を見つめる瞳は決して恐怖に負けてはいなかった。
彼はこのアルバイトを受けることにした。
あとがき
雰囲気が既にプチねたじゃないかもですが。……続きます。
2008.9/25th
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