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黄金のプチねた#45聖骸布

「すまない。今、何と言った?」
 言峰綺礼は軽い頭痛に襲われた。二本の指を持ってきて、眉間を摘んでマッサージなどを試みる。目の前にいるのは言峰薫。教会で共に暮らす家族である。
「ですから、聖骸布が欲しいのですが」
 薫は目をキラキラとさせている。欲しいな、欲しいな。と言わんばかりに両手のひらを上にして、それをこちらに差し出した。だがしかし……。
「そんなもの、一介の神父である私が所持しているはずが無かろう」
 聖骸布とは聖人の遺骸を包んだ布である。聖堂教会にとってそれは重要な聖遺物。かつては聖遺物の管理、回収を任務とする第八秘蹟会に身を置いていた綺礼である。聖骸布を手にしたことがないとは言わないが、今の自分は出向で魔術協会に籍を置く。聖遺物など所持しているはずもない。なのにである。
「またまたぁ、おじさま、それはイタリアン・ジョークですか?」
 このこの、と言わんばかりに薫は綺礼に肘を打つ。まるで綺礼なら聖骸布を持っていて当然とでも思っているかのようだ。何に使うつもりかと問えば、鎧の裏地にしたいとか。
 馬鹿げている。大切な聖骸布をそんなことに使わせるなど教会が許すはずがない。
「ええっ!!! まさか本当に持ってないのですか?! 言峰綺礼がですかっ?!」
 だからどうして言峰綺礼が聖骸布を持っていると思うのだ? そのへんについて聞いてみたい。
「だっておじさま、代行者をしていたときに、ちょっぱったやつがあるでしょう?」
 娘よ。お前は父のことを何だと思っているのだ?
「えええっ! なに真面目ぶってるんです?! おじさまなら聖遺物の一つや二つ、懐に入れているはずなのです!」
 いや、だから私は神父であって盗賊ではないのだ。娘よ、それを理解せよ。
 テーブルの向こう側でギルガメッシュが笑っている。するとこれは奴の入れ知恵なのであろうか?
 まったくもってけしからん。薫はあれに懐いているが、あれは亡霊、魔性の具現。真実の教えを身に付けさせねば娘の心が歪んでしまう。
「ハハハハハ。言うではないか綺礼。だがな、貴様に歪んでいると言われるほど、我(オレ)は愉快な在り方をしているつもりはないぞ」
「あっはっは。おじさまが人の歪みを心配するとは、明日の天気は流星雨ですね」
 心外な。幼少より善であろうと修身に努めてきたこの身だ。それを何だと思っている。
「「ハハハハハハハハハ」」
 二人は仰け反り笑っている。よかろう。今夜はとことん問い詰めてくれる。幸い未だ宵の口。酒も肴も不足はない。


2008.8/28th
 色々と変えていきます。後でもフォローもありますが。

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