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黄金のプチねた#30思想

「と、いうわけでファミリアー(生き物系)にも挑戦してみたのですが」
 そう言って薫が差し出したのは、手のひらサイズのヒキガエル。足を畳んで十センチ、足を伸ばすと倍くらい?
「へぇー、ヒキガエルとはオーソドックスね。よしよし」
 遠坂凛は魔術師なので、蛙も蛇もなんのその。コウモリだって大丈夫。
 しかし綺礼と薫の言峰親子、出来ればコウモリ(どっちつかず)やめて欲しい。
 などとも思うがそれはさておき、遠坂凛は薫が手にするヒキガエルを観察する。
 髪と宝石を埋め込んで、魔術的なパスを繋げたというヒキガエル。ものは試しにやってみますと言ってたが、なかなか普通の出来映えだ。ヒキガエルという素材は伝統(トラディション)も踏まえている。よしよしそれでこそ魔術師だ。
 うむうむと凛が頷いていると、薫はにこやかに話を始めた。
「私は火属性ですから本来は水精のカエルさんとは相性が悪いのですが、ヒキガエルは水精というより土精が強くて相性がよいようです。相関的にも火生土で「火」の私から「土」のこの子に魔力を与える流れは自然ですしね。しかもヒキガエルはカエルさんであるが故に水精を併せ持ちます。土剋水で水精を制し私の苦手とする水の魔力とのつながりが出来てナイス。この子に川で水精の気を宿した石を拾い集めて貰い、それをアクアマリンに流動の魔術で移せば私には作れなかった水の魔弾が。あれ? どうしたのですか凛?」
 凛は気力を振り絞り、倒れ込んでいたテーブルから身を起こす。弟子の肩に手を置いて、呼吸を整えワン・ツー・スリー。
「痛い・イタイ・痛いです。めり込んでます! 肩が、肩が?!」
 弟子が喚くが逃がさない。掴んだこの手を放さない。言わねばならぬことがある。
「薫、あんた魔術師でしょう! 陰陽師じゃないんだから五行説でパスを繋ぐなぁぁぁあああ!!!!」

・簡単・五行説:相生(エナジーが自然に循環する)木→火→土→金→水→木。
        相剋(エナジーがエナジーを抑える)木→土→水→火→金→木。

「えー、いいじゃないですか。便利ですよ、易経(ブック・オブ・チェンジ)。生命の木やタロットカードにも八卦は対応してるじゃないですか」
「そうだけど! 思想と概念操作の中心に置かないの!! もっと魔術をやりなさい! 教会住まいだから基督教カバラのシンボルを使って魔術を構成してあげてるでしょう?! なのになんで大陸の思想魔術なのよ!」
「あはは、いやですね凛、思想魔術なんて使えませんよ。卦を読んで言語計算くらいが精一杯です。でもこれは易者さんなら誰でも出来るし」
「だからそれが思想魔術の、って、お願いだからせめて基督教カバラか魔術カバラを使ってちょうだい」
 数学の本質が「数字と数式で現象を思考する」ことにあるように、易経は「文字と文章で事象を計算する」ことにその本質がある。明治以降は学問・思想が西洋化した日本人から失われたスキルなのだが、薫はそれを知っていた。
 魔術の実技に応用こそ出来てはいないが、最近は概念の把握に理解が進み、とんでもない所でつながりを見出すこともある。しかしあまりに東洋的で、まともな魔術師の考え方とは言い難い。
「ふっふっふ。いずれはエーテルを集める術式を構築し、マジックスクロールと呪文で巨大化できないですかね?」
 薫がでっかいヒキガエルの上で巻物を咥えている姿を想像する。忍者かお前は。
 よしゴエモン、さっそく未遠川で水精の石集めです。などとのたまう薫を捕まえ、凛は書斎に連れて行く。
「薫、シェイクスピア全集とイリアスとオデュッセイア、貴女はこれを読みなさい」
「は? たしかにヨーロッパでは教養として知っておくべきものですが、なんで今さら?」
 薫が不思議な顔をしている。

 ーー ぶちっ ーー

「判ってるなら真面目にやりなさぁぁぁあああーーーい!!! 魔術師でしょう?! 教会の子でしょう?! 今後、陰陽と五行は禁止よ!!!」
 ええっ! などと驚愕し、何か言っているが聞いてなどやらない。ふざけやがってこの娘、己が立場をわきまえろ。
「横暴だ!」
 ぶーぶー言う弟子の手の中で、ヒキガエルが賛同するかのようにゲコゲコと鳴き出した。


2008.7/2th
 数学ネタや占いネタなんかも使いたいとは思うのですが、マニアック過ぎる。……orz.
 サーヴァント召喚の呪文は生命の木の概念を流用した魔術カバラっぽいのですが(……だからマニアックすぎる)
 ホグワーツ編を書いた場合、使い魔はヒキガエルの予定でした。

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