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黄金のプチねた#25トレース・オン!
冬木教会地下礼拝堂のテーブルに、薫は図面とレポート用紙を並べていた。
書かれているのは騎士長剣(ロングソード)聖堂教会の装備品についてのものである。
設計概念、材質、加工方法、使用方法、エトセトラ。可能な限りの情報を集めてまとめた資料を手にし、一枚一枚確かめる。
言峰薫は目を閉じて、それらの記憶を模倣する。
作られた狙いを刻み込め。
構成素材を叩き込め。
加工手法を呼び起こせ。
使用の目的を思い描いて、刀身に闘いの空気を纏わせろ!
そして呪文を口にする。
ーー 投影(トレース) ーー
投影魔術。それは原型(オリジナル)の複製(コピー品)を魔力で生み出す贋作作りの術である。やはりやらずにいられない。誰もいないと確認してから、やるしかないと挑戦なのだ!
魔力が揺らぎ、視覚化(ヴジュアライゼーション)により固定された疑似霊体(アストラルフレーム)にエーテルが収束していく。そこに情報が刻まれて、幻想は裏返って実像を結ぶのだ。
ーー 開始(オン) ーー
力ある言葉に導かれ、ここに幻は真となる。
「おお!」
薫の手にぴかぴかの騎士長剣(ロングソード)が握られた。投影は成った。神秘の魔術を言峰薫は成功させた。
「あ」
でも振り上げただけでグニャリと曲がり、あっという間に霧散した。
「……不向きと知ってましたがこれほどとは」
がっくりと床に手を付く言峰薫。
薫の魔術特性は「融解」であり溶かすことに向いている。物質化の魔術である「投影」とは資質の方向性が逆だった。
さすがに薫は諦めた。
2008.4/19th
諦めるのは挑戦してからです。
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