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黄金のプチねた#23薫は呪文を唱えた
魔術における呪文とは、詰まるところ自己暗示なのだとか。
遠坂邸の地下工房で、薫は目を閉じ呪文を紡ぐ。宝石もなし。聖典紙片(マジック・スクロール)も手にしていない。
くっと薫は小さく呻く。そんな薫の体からは火属性に染まる魔力が立ち上る。
魔術とは、身に付けるものではなくて己の体(霊体)に刻むもの。
道具ばかり開発してきた言峰薫は、道具なしではあまり魔術が使えない。それではダメだと叱られた。呪文で魔術を紡ぎ出せ。
大切なのはイメージだ。そして自分の力だけに頼らずに、世界の魔術基盤を利用しろ。火のイメージ、火の象意、火の伝承を思い描いて、この世界に刻まれた神秘の形を呼び起こせ!
ーー いくぞ! ーー
薫は魔力を絞り上げ、それを呪文で振動させる。
「メラッ!」
しゅぼっ! 薫が指差すその先に、小さな炎が瞬いた。
「メラミッ!!」
しゅぼぼっ!! 少し大きな火が揺れる。
「メラゾーマッ!!!」
……しかし何も起こらなかった。
それでも薫は微笑み拳を握る。
「よし」
「何が「よし」かぁぁああ!!!」
すぱーん。
「凛、ビニールスリッパは痛いです。せめて布製にしてください」
頭をさする薫の向こうに遠坂凛が仁王立ちしておかんむりです。
「薫! 真面目にやりなさい真面目に!」
「えーっ? この呪文は世界中に知られた共通幻想。強力なイメージ喚起だと思うのですがどうでしょう?」
割と真顔な薫に対し、青筋浮かべた凛が詰め寄り言い聞かす。
「そういう問題じゃないの! 真面目に! 伝統に敬意を持って! 魔術とは神秘であり学問であり文化なの! あんたはそれを理解しなさい!!!」
「そんなことより凛、それはどこまで進みましたか?」
くっとたじろぐ凛の手には携帯ゲーム機、やっているのは往年のヒット作ドラクエ3。
「なによ、ちゃんとやってるわよ。すごろく場で鋼の剣を手に入れたわ」
「ちょっと見せてください」
ゆうしゃ:りん
そうりょ:かおる
とうぞく:しんじ
まほうつかい:さくら
「ふむふむ、ちゃんと盗賊にとげの鞭を持たせてますね」
「クラスの花子ちゃんに聞いたのよ、本当に誰でも知ってるのよねコレ。でも割と強いのがムカつくわ。慎二のくせに」
「……盗賊は後で賢者にするといいですね」
「ダメよ、賢者にするのは桜、薫は魔法使いにするわ」
薫は私の弟子なんだから、僧侶から魔法使いに転職よ。などとのたまう遠坂凛。
「まぁいいんですけど、盗賊でラストまで進めるのはきついです。せめて戦士にしましょう」
「そうね、戦士にすると打たれ強くなるんでしょう? 後ろにいる桜を守らせるんだから戦士にならしてやってもいいわ」
「……。まぁこれで凛の電子音痴が少しでも治ればいいんですが」
「見てなさい! もう十字キーとABボタンはマスターしたわ。ゲームクリアも時間の問題よ」
微妙に視線を逸らす遠坂凛に、薫は心の中でガンバレと言っておくことにした。
2008.4.19th
メラゾーマにはお世話になりました(違う)
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