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黄金のプチねた#22王様は見た

 休日の教会に、太陽からのまばゆい光が降り注ぐ。
 だがしかし、地上の光も地下には届くことはない。中庭にある階段は、人除けの結界に守られて侵入者を拒絶する。一般人が尋ねることはなく、魔術師も尋ねることがないこの場所は、あるいは地獄に近い場所であり、死と腐臭に満ちているはずの場所だった。
 しかし時の歯車は異物を挟まれ軌道を変えた。
 地下にもかすかに光が入り、地下礼拝堂を仄かに照らす。荘厳かつ峻厳な張り詰めた空気を以て、祭壇は沈黙と共に人を待つ。
 生もなく死もなく。しかし厳かなる雰囲気を湛えた礼拝堂。そこに響くはドアを開いてきしむ音。
 地下礼拝堂の奥にしつらえられた玉座の間より、主たるギルガメッシュが現れた。口元に笑みを浮かべて足取りは軽く、仄かな光に紅赤色の目を細めてみせる。
 彼はそのまま足を進めて地上に昇り、死から生へと世界が変わる。
 居住棟に行こうとしたギルガメッシュの足が歩みを止めた。むこうに従者の気配がしたからだ。
 回り込んで覗いてみると、干された洗濯物の向こう側、芝生のジャンボクッションにカヲルがいて猫もいた。
 何をしていると近づく前に、もめているのに気が付いた。

「なんですか黒猫さん。ここは私の領地ですよ? 猫の身分でこのクッションに横たわる栄光を鑑みて、私に感謝するのです。ぬぬっ、もっとそっちに寄れとは生意気な。その無礼、極刑に値します。 いいでしょう、貴様は猫じゃらしの刑に処します。我(オレ)の裁定は絶対です。痛っ! ひっかくのは反則です。やめなさい黒猫さん、猫ぱんちなら受けて立ちます。えいえいっ! ぐはっ、やられたーっ」
 ごろりと転がり、芝生に落ちた笑顔のカヲル。ここで二人の目があった。そして従者は凍り付き、笑顔であるにもかかわらず、泣きそうな様態だ。
「み、見られたぁぁああーっ?! うわぁぁぁぁああああーんっ!!!」
 従者カヲルは逃げ出した。
「ワハハハハハハハハハ」
 王様は笑顔を浮かべ、いつもの鎖を取り出した。じゃらじゃらと音を立て、それは薫を絡め取る。
「ああぁっ! ここは見なかったことにしてくれるのが大人の反応だと思うのですがどうでしょうっ?!」
「ハハハハハ。馬鹿を抜かすな。我(オレ)の従者ともあろうものが猫に負けるとは何ごとだ?! ハハハハハ。こうなったら我(オレ)自らが貴様を鍛えてくれるわっ!!! ハハハハハハハ」
「うわぁぁぁあああんっ! せっかくのお休みなのにぃっ!! 黒猫さんの馬鹿ぁぁああ!!!」
「馬鹿者め! 猫如きに負ける己の不甲斐なさをまず嘆け!! ハハハハハ」
「違うんです! わざとなんです!! 本気出せば猫などに遅れと取ったりしないのです!!!」
「よしよし、話は後で聞いてやろう。ハハハハハハ」
「あーっ! 黒猫さん助けてーっ!! お休みがーっ! 久しぶりの完全休日がーっ!!」
 引きずられていく薫を、黒猫が不思議そうに見つめていた。


2008.4.19th
 むしろ見られたということで。

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