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黄金のプチねた#20腐らない林檎

「戻ったぞ」
 そう言ってギルガメッシュは教会居住棟の応接室に入ってきた。
 彼の金髪紅眼は灯りを受けて輝き、夜だというのに白皙の顔(かんばせ)に疲労の色や陰りはない。
「おかえりなさい王様、食事を用意をいたしますのでどうかお待ちを」
 キッチンの方から迎えに出てきた薫に対し、ギルガメッシュはちょっと待てと声を掛け、デパートのマークが入った紙袋を手渡した。
「なんですか? あ、リンゴだ」
 覗き込むと、やけに丁寧な包装に包まれた二つの林檎が見て取れた。
「お前が土産に林檎を持ってくるとは意外だな、どうした? 懐かしい香りでもしたか?」
 綺礼の言葉に、ギルガメッシュは肯首した。
「うむ、我(オレ)が食していたのと似ている香りがしたのでな。試しに買ってみたのだ。カヲル、構わぬからすぐに切り分けよ」
「あ、はい。判りましたそれじゃあ切ってきます」
 すぐに林檎は皮を剝かれて八分割、お皿に載せてやってきた。二個あったので、一つ分はウサギさんにして皮も食べられるようにしてみたりする。
 それを見てニヤニヤ嗤う綺礼はさておいて、ものは試しにいただきます。

 しゃくしゃくしゃく。

「うむ、これだ。我(オレ)が食していたのと近しい味がする」
 そう言ってギルガメッシュはうむうむと頷いた。
 へぇーと思って包装紙を見てみると、付いた値札が一万円を超えていた。
「高っ! 林檎二つで一万円?! どんな金ピカ林檎ですかこれはっ!!! ……あ、これ「腐らない林檎」なんですね。なるほど」
 そうかー、と納得顔の薫だが、綺礼は怪訝な顔になる。
「どういうことだ? 腐らない林檎などあるはずがないだろう」
「何を言っておるのだ綺礼、我(オレ)は不思議に思っていたのだが、この時代の林檎は何故腐るのだ?」
 は? と綺礼とギルガメッシュはお互いを見やっている。
「いや、普通は腐るだろう?」
「何を言うか、ものにもよるが野菜や果実が腐ってどうする?」
「お前の時代にもワインは存在したはずだが?」
「あれは腐ってるのではない、発酵であろう?」
「神代では野菜は腐らなかった、ということか?」
「おじさま、そーじゃないです。これは「腐らない林檎」なんです」
 ウサギ林檎をかじりつつ、薫が綺礼にお皿を差し出す。
「おじさま。植物はふつう「枯れます」よね? なのに野菜や果物は「腐り」ますよね。どうしてだと思います?」
 言われてみれば何故だろう。そういえば植物は腐る前に「枯れる」ものだ。大木などは寿命が尽きて枯れ始めてから、土に帰るまで平気で十年以上は立っている。落ち葉や枯れ草だって土になるまで数年は必要だ。なのにどうして買ってきた野菜や果実は腐るのだ?
「それはですね。肥料に関係があるのです。
 動物性タンパク質の配合された肥料を使うと、ねっとりとした甘さの野菜や果物になるのですが、これは放っておくと腐ります。
 植物性の肥料のみだと、さわやかというか、やや味気ない自然な風味の作物になるのですが、これは風通しに気を使っていれば腐らないで放っておくと乾燥野菜やドライフルーツになるのです。
 この林檎は動物性肥料をやらないで落ち葉のみで育てた林檎農園のものですね。以前テレビで一個五千円とかってやってました。
 ちなみにピラミッド・パワーで林檎が腐らずミイラになる。なんてヤツのトリックの一つがコレです。あ、でもあれは乾燥野菜載せてるだけかもですけどね。あはははは」
「ほう、そう言えば即身成仏でミイラになるには肉食を止めて菜食にするというが、同じ理屈なのかな」
「多分そうだと思います。肉はパワーの出る食べ物ですが、ムラッ気になりやすく落ち着きを減じます。狩猟民族とは言い難い日本人には本来向かないのです」
 そう言ってしゃくしゃくと林檎をかじる薫ちゃん。
 綺礼もウサギ林檎をかじってみると、自然でさわやかな味がした。


2008.2/29tth
 普通、植物は枯れる。動物性肥料を与えると大きく、ねっとりとした甘みのある作物が出来るというのは本当です。
 置いておくと腐らずドライフルーツになる林檎を作る農家も日本に実在します。
 ……我ながらだからどーしたとは思いますが。

追記:腐らずに枯れるといっても、土に触れれば当然バクテリア分解によって腐ります。暖めても糖分の作用で腐ります。その辺は常識の範囲を当然超えないようです。
2008.3/1th

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