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黄金のプチねた#17雑踏
冬木市新都の駅構内に、教会の僧衣姿をした長身の男と尼僧服に身を包んだ少女の姿がありました。
言峰綺礼と薫である。二人は連れ添い、用事を済ませて冬木に帰ってきたところ。教会の用事といっても「裏」の用事ではありません。いつもそれでは困ります。
孤児院の運営とか寄付金の分配など、お金絡みではあるものの、綺礼と薫は時々呼ばれて余所の教会に顔を出したりするのです。グループが援助する奨学金制度や寄付金分配は綺礼が管轄するのだが、実質は薫が決めているので着いて行く。
そして仕事は済みました。駅が近かったので電車で戻った。ついでに会社による予定。むむむ、そういえば車ばかりで電車に乗るのは久しぶり。神父&シスターという我々に、好奇の視線が浴びせられるがどうにも感じがよろしくない。
人混みの中で薫が居心地の悪さを感じていると、綺礼が、おやっと立ち止まる。
薫が彼の視線をトレースすると、その先には駅の階段で、子供が転んでいるようだ。えーんえーんと泣いている。
しかし見事な転びよう。ランドセルを背負った小さな女の子が、階段で上下逆の状態で腹ばいになっていた。降りてくるときに転んでしまし、ダイビングをかましたようだ。痛かっただろうにと薫は顔をしかめます。
綺礼と薫のいる場所は、女の子がいる階段とは通路を挟んで反対だった。十数メートルの距離がある。
……距離がある。
……おい? どうして誰も助けない?
人通りは少なくない。帰宅ラッシュはまだなのだろうが、大人がたくさん歩いてる。足早に突き進むサラリーマンや学生達、しかし誰も助けない。女の子は転んだままで泣いたまま、その横を、大勢の人が何もせずに通り過ぎていくばかり。
薫が唖然としていると、綺礼がひとりで歩を進めた。
たった数秒で100人以上に見捨てられた女の子を助けるために、言峰綺礼が歩み寄る。
その間にもぞろぞろと、無表情の大人達は只々通り過ぎていく。階段のギザギザの上で、立てずに泣いている女の子を見捨てて過ぎていく。
薫は綺礼の後を追う。もう少しと言うところで、OLらしきお姉さんが女の子を助け上げた。大丈夫? と笑いかけ、汚れを祓ってあげている。
よかった。なんとか平気のようだ。OLさんが綺礼に気が付いて目線を送り、照れくさそうに会釈した。綺礼は小さく頷いて、こちらに戻ってくるようだ。
「さて行くぞ、薫」
それだけ言って綺礼は先に行くようだ。その後を薫は着いて行く。
だが思う。
泣いていた女の子は助けられるまでに、一体何百人の大人達に見捨てられていたのだろうか。
駅にはこれだけ人がいて、しかもたくさん入れ替わる。
なのにどうして助けない? 別に死ぬわけでもないだろう?
薫は思うこともある。
こんな奴らを守るために、戦わなければならぬのかと、こんな国の連中のために、命を賭けねばならぬのかと。
そう思うこともある。
あとがき
(封印指定・自主規制)こちらから見にいけます。
この分に対してのあとがきが、あとがきとしてふさわしくないと判断し、一階層深く沈めることとしました。
あとがきは本文に付属するものであり、個人的なエゴを主張する場ではない。などと鑑み、こうした次第です。
色々と試行錯誤をしながら続けていこうと思います。
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