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黄金のプチねた#16黄金の髪

 日差しが柔らかい教会裏手の開けた空き地。そこにギルガメッシュと薫の姿があった。
 椅子に腰掛けたギルガメッシュはポンチョのような真っ白な布を掛けられ、テルテル坊主みたいになっている。
 後ろに立つ薫の手には、櫛と鋏が握られる。櫛を真っ直ぐに立ててみて、むむむと唸る女の子。
「どうしたカヲル? 我(オレ)が許すといったのだ。疾く髪を切るがいい」
「はい王様、では失礼します」

 ちょきちょきちょき。静かな音が日だまりの庭に小さく響く。近くで鳥が歌を歌い、通り抜ける風の匂いが心地よい。

 サーヴァント・アーチャー。ギルガメッシュ。
 霊地冬木の聖杯戦争システムの召喚に応えし四千七百年前の英雄王。その力は数多い英霊達の頂点に立つと言っても過言ではない。
 そんな彼であるが聖杯の中身を浴びて、今もこうして現界を続けている。ただしあくまでも「サーヴァント」として受肉したということらしいのだ。
 魔力を供給されれば休息を不要とする。魔力が不足すれば食事をしても意味がない。霊体にはなれない。などなどなど。
 そして受肉した肉体は、人と同じ営みをする限り人間を模倣した機能を示す。
 つまり食事をすると髪が伸びるし爪も伸びたりするのである。
 それを薫が手入れをすることになった。これも従者の勤めと王様は笑う。薫も文句はありません。マネキンで多少の練習を繰り返し、時には言峰綺礼を襲撃し、今日こそギルガメッシュを散髪するのだ。

 ちょきちょきちょき。大して時間はかからない。それほど伸びてたわけじゃないのだ。しかし二十分はしっかりかけて王の散髪は終わりとなった。
「どうですか?」
 鏡を使って薫は仕上がりを見せた。ギルガメッシュは良いと応えて席を立つ。ねぎらいの声を掛けたところでおかしな様子に気が付いた。
「どうしたカヲル?」
「はい、これ、王様の御髪(おぐし)なのですが」
 見れば薫の手には切った髪が集められたいた。大した量ではないが片手にこんもり山にはなるか?
 それがどうしたと目線で問うと、真面目な顔で従者は言うのです。
「王様、これを宝石に練り込んでも良いですか?」
「ハハハハハハハハハハハ」
 ギルガメッシュは仰け反った。

 ーー 融解、干渉 ーー

 結局、宝石ではなく金塊に練り込んでみることにした。薫の手にした500グラムの黄金のインゴット(延べ棒)が、左手の中で溶けていく。火属性の魔力による概念干渉され「融解という形態」になった金塊に、薫はギルガメッシュの髪を振りかける。受肉して完全にこの世の物体となったギルガメッシュの肉体、その一部である黄金の髪を練り込んで、ぐにぐにと薫は金を練る。そして魔力に「火(概念)」を灯す。

 ーー 練成、昇華 ーー

 少々の焦げた匂いを余韻に残し、輝く黄金のみが薫の手の中に残された。
「どうだ?」
 横から声を掛けたのはギルガメッシュだ。眉を寄せつつ薫は王様に金塊を見せてみる。
「うーん、どうでしょうか? 多少は王様の「神秘の格」が写せたようにも思えるのですが」
 ギルガメシュは金塊をつまみ上げ、少し見てからそれを返した。
「続けてみるがいい。この我(オレ)の髪を練り込み続ければ、黄金は宝具に等しい神秘の格を宿すであろう。カヲル、貴様は我(オレ)の従者。なれば黄金で飾った武具を持つのも当然だ。綺礼の神の名を記した聖典などを使い続けるのも面白くない。構わぬ、我(オレ)の髪をくれてやる故、我(オレ)の従者に相応しい何かを造って見せろ」
「承知いたしました王様。彫金して金を練り込めば……。剣が良いか、槍が良いか。いや日本人は日本刀? うーん、どうしよう」
「ハハハハハ。恐らく金塊に神秘が宿るのは数年先だ。ゆっくり考えるが良いであろう」
「判りました王様」
 アゾット剣がいいかな? 護符にして「対魔力」を狙うとか? 指輪にしてギルガメッシュと念話が出来るようにするのもいいのかな?
 薫は色々考えてみるのです。


あとがき
 薫の主兵装は黒鍵(というか「聖典の書」強化計画あり)ですが、いくつかはB級クラス概念武装を持たせるつもりです。神秘の格では第七聖典よりは確実に劣り、ブラックバレル・レプリカにも劣るくらい?(あれって強いのかな)を考えてます。
 サーヴァントを傷付けることはできるが、即死させるのは絶対に無理くらい? 神秘の格が高くても特殊能力(真名開放)はありませんけどね。あってもそれは現代レベルの魔術になるでしょう。
2008.2/11th

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