黄金のプチねた＃13正拳突き

「ところで凛、正拳突きは基本かつ重要な必殺技術な訳ですが」
「薫、貴方、絶対に武術好きでしょう？」
　凛は護身術と称して中国武術の基礎を習っている。綺礼が先生だったのだけれど、薫が綺礼からしっかり習っているらしいので、薫に習うことにした。
　教わったのは基礎の長拳（少林拳）と八極拳の基本功たる金剛八式、ただし金剛八式も少林拳の一種らしい。
　しかし昨日も今日も、そして多分、明日もやるのが正拳突き。薫はコレが好きそうで、いつもこれをやりたがる。
「凛、貴方は正拳突きの真実が判ってない!!!」
「はいはい、私は魔術師であって拳法家じゃないんだから当たり前。だいたい正拳突きなんて実戦的じゃないんじゃない？　何よその目は？」
　薫は、ケッ。これだから素人は困る。とでも言いたげな顔をしている。
「凛、正拳突きが多くの武術で一番の基礎になっているのは意味があるのです。いいですか？　
　腰に構えた拳を敵に向かって真っ直ぐ突き出す。それがいわゆる「正拳突き」です。
　この技は。
　ナイフを握って正拳突き。
　フォークを持って正拳突き。
　ペンを握って正拳突き、
　短刀持って正拳突き。
　石を握って正拳突き。
　岩を手にして正拳突き。
　棒を持って正拳突き。
　刀を手にして正拳突き。
　槍を持っても正拳突き。
　つまり「その手に握った全てのものを武器化して、相手に向かって一直線に叩き付け。殺せるだけの威力ある攻撃をする」それが正拳突きの型なのです。
　そして「武器が無くても拳を握って正拳突き」で敵を充分倒せるのですよ」
「そういう技だったの?!」
　すごいじゃない！　見直したわ正拳突き!!
「このように、武器を手にした時の動きと、素手になった時の動きを共通化させているのが武術とか空手です。特に空手は実戦的だと国際的に評価が高く、ゲリラなんかも練習するそうですよ。中国武術はやはり長拳からやらないと難しいそうで国際的には実戦向きとは言われません、時間かかりすぎですから。もちろん一部は頑張ってますが一部ですね」
　それはいいのか中国武術。
「ともかく、ボクシングや格闘技は素手でのゲームを「実戦」と思っていればいいですが、武術はそれでは困ります。私も両手に黒鍵を持って工夫をしていますよ」
「ふぅん。って薫はもっと魔術をやりなさいよ。魔術を。なによその、しまった。って顔は?!　薫？　薫ー?!」

あとがき
　そして凛は空手を学ぶ、のかなぁ？
2008.2/11th