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黄金のプチねた#12浸透勁

「で、中国武術に「浸透勁」という技術があるのですが」
「薫、貴方さりげなく武術マニアでしょう? まあいいけど」
 珍しくハイになっている薫、ひょっとして説明好きかもしれません。
「浸透勁とは、殴りつけた表面ではなく、体の深くや内臓などにダメージを与える殴り方です。中国武術をひいきにする人は、これを必殺技かなにかと勘違いしているみたいですね。いや、危険な打ち方ではあるのですが?」
「なに? たいしたことないってこと?」
「そんなことはないですよ! 充分危険です。直接触らなくても心臓や肝臓に殆ど直接ショックを与えることが出来るのです! あー、でも理解すると簡単にできるので、実は簡単なんですよあれ」
「そうなの?」
「はい、凛。ちょっと失礼」
 そう言って、薫は立てた手刀を凛の胸に押し当てた。
「凛、人間の体には弾力があるでしょう? こうやって手刀を押し当てると、肉と肋骨(胸郭)の弾力で、こう、跳ね返される感がある」
 ふむ。押されれば肉が潰され肋骨がきしむ。痛くはないが押されてる。
「で、こうやって押し付けることで「弾力のあそびを取る」のです。押し付けて「もう凹まない」という所まで押します」
 グッと胸を押された。むむむ。ちょっと苦しいか?
「こうすると押しつぶされた部分が弾力を失い硬くなり「力を伝えやすくなり」ます。そこでこうします」
 言って薫は手刀をパタンと倒し、掌打に変えて打ち込んだ。
「ぐはぁっ!!!」
 たいして強くもなく早くもない打ちだったが、殴られるとも叩かれるとも違う嫌な感じが心臓を直撃し、凛は思わずうめき声を上げた。
「あっ! 凛、大丈夫ですか?!」
「ぐ、大丈夫よ薫。ぐはっ。これは嫌な感じね。奥に伝わったとでも言うのかしら?」
「そうですね。つまりこういうことです。まず「押し当てて表面の弾力を奪い」そして「さらに突き込む」ことで衝撃を深部に「伝える」これが浸透勁の正体です」
「無茶苦茶危険じゃないの?!」
「それがですね凛、空手でいう「拳が相手を突き抜けるように打て」とか、ボクシングでいう「フォロースルーをきちんとやれ」というのはつまりこれと同じでして「当たってから更に突き込む」それだけ守れば深部に伝わる危険な突きになるのですよ。つまり威力とは関係ないので普通に殴って強い人じゃないと浸透勁使っても意味がないのです。あっはっは」
「あっはっはっはっは」
 笑う薫に、凛も嗤って向かい合う。
「待ちなさい凛、何故こっちに近づくのですか?! 目が笑ってないですよ、凛?! 凛?! 待ってーっ!!! げふっ!」
 遠坂凛の浸透勁が薫の心臓に炸裂した。


あとがき
 他にも縦拳を転がすようにして打つ方法とかもあります。しかし普通に殴って強くないなら意味ねーってのは本当でしょう。ポイントは「弾力を殺すこと」「当ててから更に押し込むこと」これだけです。寸打と組み合わせれば、軽く触ってからでも危険な打ち方が出来ます。が、基礎体力が無ければ効きませんし、普通に殴って人をぶっとばせないなら効果的な打ちかたするのは無理でしょう。そこは現実の武術なめんな。ということで。くれぐれもお友達に試したりしないでくださいね(はぁと)心室細動などで死んでも責任もてませぬ。
2008.2/11th

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