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黄金のプチねた#11縮地

「凛「縮地」っていう歩法を知っていますか?」
 薫がそんなことを言いだした。凛はちょっと考えた。
「確か遠い間合いを一瞬で詰める足捌き。だったかしら?」
「そうですね。西洋スポーツの影響を受けて失伝した技術ですが、判ってしまうと簡単ですよ。一歩で三メートルは詰められます」
 そう言ってニコニコ笑う薫ちゃん。
「薫、あんたどうしてそんなこと知ってるの?」
「武術が好きで東洋哲学科にいた人がいた。とだけ言っておきます」
「……うん、もういいわ。ありがとう。で、縮地ってどうやるの?」
 泣きそうな笑顔の薫に、凛はそれ以上聞くのを止めておく。話してくれただけで充分だ。いつか全てを聞ける時も来るかもしれない。
「はい。縮地のミソは自分の体重を減らすことと、地面を蹴らないことにあるのです」
「はぁぁああ?! 体重減らして地面を蹴らない?! なにそれ?!」
 現代スポーツに喧嘩を売ってるのか言峰薫っ!!! しかも「体重を減らす」などとは如何なる魔法か! 乙女の夢です!! すぐに教えろこの娘っ!!!
「苦しいです凛、ギブギブ」
 気が付くと薫の首を絞めていた。なんておちゃめな遠坂凜。えへっ。
「……首締めといてそれですか? まぁいいですけど。こほん。じゃあ説明しますね。
 まず立った状態で、体を支える両膝の力を抜きます。そうすると人はその場にしゃがみます。これはいいですよね?
 ではもう一度。瞬間的に、この身を支える膝の力を抜き、ごく短時間ごく短距離「この体を自由落下させて体重(重量)を激減させる」これがまずワンポイントです。
 いいですか? 質量は無重力でも重力下でも変わらない。でも重量は無重力ではゼロになる。無重力ならロケットだって指先一つで動かせます。……あー、それは人が動いちゃうかな?」
「言いたいことは判るわ。先を続けて」
「こほん。体重計の上で急にしゃがめばメーターの数字が減る。これは墜ちている間は無重力と同じで体重、つまり重量がゼロになるからです。これを日本武道では「膝を抜く」などと言います。
 そしてですね。体重が激減している刹那の時間にタイミングを合わせて、体を前に「ずらす」のです」
「ずらす? 蹴るのとは違うの?」
「ええ、蹴って体を持ち上げてはいけません。体重計の上で蹴り付けるとメーターが増えるでしょう? それだけ余計にエネルギーがいるのです。強く蹴るのは西洋式というかスポーツ式というか、欧米狩猟民族的ですね。
 そうではなくて、足の裏を地面にべったりつけて、滑らないように摩擦して「地面をつかみ」自分の体を前方に「引きずり出す」のです。そうすると体重が激減した自分の体を重力に逆らわせずに前に進めます。
 50キロの体を地面を蹴って浮かせて進むより、瞬間的に自由落下を起こして体重を10キロとかに減らし、地面を足でつかんで強引に引っ張り出すほうが、圧倒的に早く遠くに進めます」
「なるほど。質量は変わらないけど、重量は変えられる。それがポイントなのね」
「そうです! 日本のサムライは魔法など使わなくても、体重を減らして風のように間合いを詰め、体重を増やして鎧を断ち割る技術を持っていたのです!」
 えっへん。と胸を張る薫を見ながら凛は思う。この子の親は武術家? 東洋哲学科っていうのは親の出身? 兄がどうとか綺礼は言っていたかしら?


あとがき
 上記の「縮地」は実際に使えます。突き(ジャブ)の間合いが2メートル以上に。後ろの足を前に進める一歩なら、3.5メートル位まで管理人(私)なら届きます。下手なスポーツ剣道の竹刀の間合いを超えます。便利ですよ。
 あ、上記の理論は管理人(私)の理解範囲なので、これ以外にもあると思います。
2008.2/11th

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