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黄金のプチねた#10二重構造

 遠坂邸の庭に気合の声がした。日曜、晴れの日、昼下がり。凜と薫が向かい合って突きを繰り出す。子供同士のどつき会いはしばらく続き、間合いが開いたところで終わりになった。
「ねえ薫、どうだった?」
 ふふんと笑顔の凛に対して、薫は腕をさすって渋い顔になる。
「良い感じですよ凛、ですがもう少し手加減しても良いと思います」
「あら、それじゃ修行にならないじゃない」
 つんと横向く遠坂凛に、言峰薫は苦笑する。対打(スパーリング)なんて触る程度でいいんだけどな。そう思いながらも感心する。遠坂凛、流石未来のナックラー。いや、それでいいのか魔術師トオサカ。お父さんが泣いてるぞ?
 体を軽く動かしてクールダウンをしている間に、ちょっと武術の小ネタなど。
「凛、中国武術に「長拳」というのがあるでしょう?」
「長拳っていうと拳法の基礎にやる初心者向きの奴でしょう?」
「あはははは。合ってるようで間違いですよそれ。まず「拳法」とは日本語あるいはアメリカのボクシング&テコンドーのミックススポーツを指す言葉です。正しくは中国武術、向こうの人は国術などというらしいです。
 まあそれさておき「長拳」とは基礎ではありますが、実体は「少林拳」ですね。クセが無く真っ直ぐで動きが速い洗練された無駄のない殴り合い、みたいな感じのものです。あ、流派ごとにアレンジしたオリジナル長拳を基礎にしてることも多いのか」
「ふうん」
「でですね。中国武術でも比較的新しいものや有名どころは、この長拳(少林拳)をどう攻略するかという応用発展系であることが多いのです。
 思いっきりぶっちゃけますと、長拳(クセのないキックボクシング+αみたいな殴り合い)で普通に殴り合い、殺し合えるようにして、それが出来るようになったら長拳を攻略する技術を独自の門派として習得する。という二重構造をしているのですよ」
「そうなの?」
「全部がそうじゃないですけどね。大切なのは長拳的な「普通に殴り合う」技術で人が倒せるレベルに達しておかないと、その攻略法である各の門派の技術を使うのは無理。基礎を大事にしましょう。ということです」
「へぇ、やっぱり武術も魔術も基礎固めが重要ってところなのかしらね」
「ええ、何でもかんでも手を出せばいいというものではない。ということです。凛は五大元素(アベレージ・ワン)ですがテーマを絞り込まないと後々大変かもしれないですよ?」
「……それはちょっと違うんじゃないかしら。それを言うなら薫も魔術に絞りなさいよ。教会の秘術なんてやらないでもいいじゃない?」
「いやぁ、今日は暑いですねぇ、のわぁっ!!! 何をするのです凛!」
 ちっと舌打ちする凛の拳が薫の脇腹をかすめていた。魔術師のクセに口(呪文)より手(拳)が先に出る。それはどーかと思う薫だった。


あとがき
 知人に李氏八極拳をやってた男がいるのですが、基本の突きで人を殺せるようにしなきゃ、その先何やっても無駄よ! と豪快に笑ってました。私も格闘武道をやってましたが否定できないものを感じます。
2008.2/11th

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