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黄金のプチねた#02 降霊魔術

 遠坂邸の地下にある工房で、凜と薫がテーブルを挟んで向き合っている。
 大人のいない勉強会、しかしテーブルに広げられた文献は、英語・ドイツ語・ラテン語だ。
 ノートこそ厚手の紙製で羊皮紙ではないものの、書き込み道具は羽ペンだった。
「魔術には色々あるけれど、魔術の華と言ったら降霊と召喚かしらね」
 そう言って得意そうに胸を張る遠坂凛。おおー。と目と口を丸くしている言峰薫に、先生である凛は講義を続けます。
「では言峰君。まず降霊と聞いて、貴女はどんなものをイメージしますか?」
「降霊と言うからには霊体を降ろすのでは? 霊を呼ぶ、霊を引き寄せる、霊を取り憑かせる、とか?」
「そうね。間違ってはいないけれど、正確ではないかな。ねえ薫、霊ってどんなものだと思う?」
「へ?」
 改めて聞かれると、実に困る質問だ。そういや霊って何だろう?
 困ってしまった薫に凛が説明します。
「まず魔術では人間は、肉体・霊体・精神・魂で構成されると考えるの。肉体は骨とか肉とか皮とか神経、これは別にいいでしょう?」
 ふんふんと頷く薫ちゃん。
「そして魂が人の核よ。死んだ後、天に昇ったり地獄に堕ちたり、転生したりするのはこの魂。存在と意志を司るの。
 それから魂と肉体を結びつけるのが霊体で、記憶は肉体と霊体に刻まれる。
 普通は死んで魂が抜けると肉体と霊体は崩壊して、記憶はそこで消えてしまう。生まれ変わるのは普通、魂だけだから基本的に記憶はそこで消えて無くなる。
 だけど優れた存在となった魂は霊体を維持したまま高次存在になったりするのよ、天使とか御使いとか、眷属とか英霊とかそういう奴ね。
 あと霊体が壊れないで場所や物に固定される場合があるわ」
「それは自縛霊ってやつですか?」
「そうね。ここで判って欲しいのは、降霊は霊体を扱う魔術の総称で、霊体には記憶があっても魂が無いってこと。魂が去ってしまった後に残った記憶の抜け殻、世界と同化した魂達が持つ霊体を呼んでも同じ、それは記憶であって情報なの。意志がないのよ、自縛霊は焼き付いた記憶通りの行動を繰り返すけどね」
「なるほど。つまり霊体を呼んで記憶を教えてもらうとか、記憶しかない抜け殻である霊体を使い魔にして使役するのが降霊魔術なのですね?」
「そうよ、召喚と違うのは降霊は霊体、つまり記憶が焼き付いた抜け殻を扱うのに対して、召喚は魂がある存在を呼ぶ術だって事。術式そのものに大きな違いはないけれど、これは凄く違うのよ」
「……なるほど」
 考え込んだ薫に、凛は笑顔を見せて明るく言う。
「でね、降霊が面白いのはここからよ。要するに、実在していなくても概念として存在するのなら呼べるのよ。神様でも仏様でも、絵本の怪物・架空の人物。なんでもありよ」
「おおおっ! それは本当ですか?!」
「エーテルに記憶を焼き付けて使役するのも降霊術よ。実体化させればゴーレムなのかな?
 あれって石像のイメージがあるけどオリジナル伝承では霊体なの。最近じゃすっかり石像扱いなのよね、なぜかしら」
「凛、それはゲームのせいですよ」
 げーむ? と首をかしげる遠坂さん。ウィザードリィとウルティマから始まったRPG文化には詳しくないようだ。
「そう言えば凛、降霊術は生き霊も呼べるのですか?」
「喚べるわよ。というか聖堂教会のエクソシストなら生き霊も死霊も喚ぶんじゃないのかしら?」
「あー。そう言えばそうですね。おじさまにも聞いてみますね。ふにゅっ」
 凛は薫のほっぺを摘んで引き伸ばす。
「薫。貴女は遠坂の弟子なんだから、ちゃんと魔術を憶えなさい。綺礼に聞くのは後でいいの! 判った?!」
「判りまひひゃー。判りまひひゃから放ひひぇー」
 じたばたする薫を無視して先生は笑顔で言うのです。まさにあくま。
 涙目で頬をすりすりする薫に、凛は講義を続ける。
「日本で有名な式神の術も降霊術かしらね。木札や呪符を寄り代にして霊体を形成して使役する。
 指輪やランプを核にすればアラビアンナイトの魔神。割と世界中にある術だから、薫も魔術師なら降霊使役くらいは出来るようになってよね」
「うー。努力します。先生」
 よろしい。と凛が答えて今日の講義はお終いです。

 そして帰って言峰教会。
「おじさま、降霊魔術でおじさまの生き霊を喚んでみたいのですがいいですか?」
 薫は降霊魔術で、言峰綺礼の憑依経験を狙います。


あとがき
 要するに管理人(私)の脳内設定。降霊と召喚って、こうかなぁ? と。

・降霊魔術「言峰綺礼」
 降霊を学んだ薫が思いついた降霊術のテーマの一つ。
 代行者(エクスキューター)言峰綺礼の生き霊を降霊し、自分に憑依させて記憶と経験を頂こう考えた。体術・黒鍵・洗礼詠唱の修行にプラス修正。対魔力が微妙に上がるものとする。いきなり強くはならない。
 ただし、一時的に呪いの声が聞こえてしまい、数日の間、かなりうなされることとする。
 繰り返すと性格が悪くなっていく(?)
 綺礼は面白がって協力しているものとする。究めれば?????
 ちなみにギルガメッシュの憑依経験は不可とする。間違って成功したら発狂するでしょう。
2008.1/11th

追記:薫の中にある酒器宝具「黄金の林檎酒」には持ち主の歴史が刻まれていないので、特定の英霊は喚べません。触媒なしでサーヴァント召喚を試みた場合、かなりの確立でアンリ・マユ(英霊体)が応えるとします。

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