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 ここは何処とも知れぬ不思議空間。
 タイガとブルマが切り盛りする妖しげな道場の、恐らくは斜め下にある教室である。
 聴講席に集う者達は何故か皆二頭身。紐で吊られた少年。煙草を咥えたやさぐれ少女。青黒い髪のヘタレ少女。他にも時代を無視した装束に身を包んだ者がちらほらと集まっている。
 そんな教室の教壇に、金髪を編み込んで後ろにまとめた翠(みどり)色の瞳の少女と、助手の青年が講義内容の確認をやっている。

 資料の準備はよいですか?今回は雑学的な内容ですが、だからといっていい加減ではいけません。神は細部に宿る、という言葉があります。細かなところに気を遣わなければ良い作品は書けない。という意味の言葉です。そう、手抜きはいけませんよ、手抜きは。え? 判っている。ふふふ。ベティヴィエールそれでこそ我が騎士です。ごほんげほん。ではそろそろ……。

セイバーのアーサー王伝説講義
第五回:鞘とその他の装備品


 皆さん、こんにちわ。五回目であり、エクスカリバー解説講義の後である今回の講義は、エクスカリバーの鞘について、そしてアーサー王が所持していたその他の装備について紹介しようと思います。

 まずエクスカリバーの鞘について説明いたします。
 アーサー王の剣がエクスカリバーとなったのは、アーサー王伝説が変化していく流れの中では後期です。
 だから、という訳ではありませんが「エクスカリバーの鞘」について記述が見られるようになったのは、伝説の完成期、イギリスに逆輸入された後です。
 なおカレトブルッフ、カリバーン、エス・カリブールの段階では鞘に魔法的な効果はありません。というか鞘についての説明自体がありません。
 そして鞘の持つ不思議な効果ですがこれは「所有者を守り。血を流すことがない」あるいは「傷付いても失血死しない」となっているようです。
 総じて「血を流すことがない」ということであり、これは「血(命)を流さない」つまり不死性をもたらすマジックアイテムであると言って良いでしょう。
 アーサー王伝説の中で魔術師マーリンは、剣よりも鞘の方が重要なのだ。と鞘の大切さを述べています。
 後にアーサーの異父姉モーガン・ル・フェイの策謀によって奪われてしまい、不死性を失ったアーサー王は終焉を迎えることになります。
 このように重要な存在として述べられる鞘がある故、鞘の話がない最初の剣(エクスカリバーに対してのカリバーン。つまり折れた剣)は、エクスカリバーとは霊的にも違う剣である、とする研究者もいます。

 なお、Fate/stay nightでは「全て遠き理想郷(アヴァロン)」と言う名前で呼ばれておりますが、これは当然TYPE-MOON様のオリジナル設定ですのであしからず。
 ちなみにアヴァロンとは妖精達が住む異界です。この場合の妖精とは日本で言うなら天狗かサトリのような人間型の妖怪?のことで、いわゆるフェアリーのような小型の妖精とは違います。おそらく東洋における仙人というのが近いでしょう。異界というのも天狗や仙人が神通力で生み出した天狗界や仙界に近いでしょう。
 そういった点ではFateにおける「固有結界」というのがこれらに近いかもしれないで、え? なんですかベディヴィエール? 脱線している? はっ、しまった。私としたことが。げほんごほん。

 このように重要であるとされる鞘ですが固有名詞は持ちません。強いて言えば「エクスカリバーの鞘」というのが正式名称となるでしょう。

 次にアーサー王の武具について列挙していきます。

・セクエンス(SEQUENCE)
 これはアーサー王の所持していた剣の一振りとされています。詳細な記述はありませんが、これをもってサクソン岩の戦いでは戦場を駆けました。

・ロンゴミニアド(RHONGOMYNIAD)
 もしくは単にロンと呼びます。アーサー王の使った槍です。ブリタニアがローマの影響を受けていますので、形状はパイクに近いと推測されます。つまり四メートル以上の長さで突いて使う槍だろうと思われます。

・ウィガール(WYGAR)
 アーサー王の鎧でチェインメイル(鎖かたびら)伝説の鍛冶匠ウィテーグの手によって作られたとされています。
 チェイン・メイルは実際にはチェインメイルと呼ばれることはなく、中世においては「メイル(鎖またはリング一個を指す)」と呼ばれていました。
 しかしローマ帝国には「ロリカ・ハマタ」とよばれた鎖または金属リングを紐でつないだ鎧がありました。
 ローマ帝国、共和制時代からあったようなので、ブリタニアにもあったと考えられます。
ただ金属板を使ったプレートアーマーに近しい鎧もあったので、防御力に劣る鎖鎧がアーサー王の鎧というのはどうなのでしょう?
 中世十字軍では長い期間「ホーバーク」という長袖長裾フード付きのチェインメイルが採用されており、普通はこのホーバークの名がチェインメイルを指していたとのことなので、何か関係があるかもしれません。

・プリドゥエン(PRYDWEN)
 アーサーの船もしくは盾、または舟になる楯ともいわれます。聖母マリアの意匠が施されていたともいわれます。

 他にも色々とありますので述べていきますと、

・ドゥン・スタリオン
 良く聞く名前かと思いますが、アーサー王の馬の名で、今でもイギリスの村はずれに出没するという話です。

・スプマドール
・ラムレイ
 これらもアーサー王の所持していた馬の名前です。また、当時のブリタニアでは黒い馬がブリテン人のシンボルであったようです。

・円卓(ラウンドテーブル)
 アーサー王に仕えた騎士たちが座したテーブル。
 最初の円卓は、王妃ギネヴィアがアーサーに嫁ぐときに、彼女の父から贈られたとされています。
 円形のテーブルは座したときに上座や下座といった順位がつかないため、争いが起きないという意味があります。
  ただし、この円卓には一つだけ危険な席と呼ばれる席があり、座ろうとした者はその場で命を落としたり、地面に飲み込まれたりと悲惨な最期を遂げます。
 この席は一人の騎士のために約束されていてことになっています、その騎士はガラハッドで、アーサー王のために聖杯探索を行いました。
 中世欧州ではこれにちなみ、領主たちがこぞって円卓を作ったという事実があります。

・聖杯(ホーリー・グレイル)
 さて、色々と問題となる聖杯ですが、これは本来二つの聖杯があります。
 一つはキリストが十字架に磔にされ、ロンギヌスによって刺された槍で絶命したとき、その血を受け止めたとする杯。復活の力を象徴する聖杯。
 もう一つは磔にされる前夜に行われた「最後の晩餐」で使用された杯。いくらでも食料(あるいは飲み物)を生み出す力があり、豊かさを象徴する聖杯。
 アーサー王伝説での聖杯探索で求められたのは後者の聖杯で、荒れ地を回復させる力を持つとされました。
 そしてこの力はケルト神話の魔法の大釜にも共通する豊穣の魔力と言って良いでしょう。
 アーサー王伝説の骨組みはケルトの伝承からですので、元はケルトの大釜であったものに、キリスト教の同じ秘力を持った聖杯が重ねられて今日に伝わったと思われます。

 少々マイナーな物も紹介しましょう。
 アーサー王伝説の中に「ブリテン島の十三の宝」というものが出てきます。名前ばかりで詳細は述べれていないのですが紹介します。

・アーサー王の透明マント。
 名前のとおり、着用すると姿が見えなくなります。伝説では特に使用されません。このサイトの管理人は、これが「風王結界」の元ネタだったら面白いのに、と思っているようです。

・ブラン=ガラッドの角。
 好きな飲み物が出てくるという角で出来たコップ。元はヘラクレスが殺したケンタウロスの持っていたものです。

・ディウルナハの大鍋。
 アーサー王の従兄弟、キルフウフが婚礼のために成し遂げなくてはならなかった課題の一つで手に入れた物で、死体を放り込むと復活する魔力を持つとされます。

 詳細が少しでも判るのはこれくらいで、後はよく判りません。

・モルガンの馬車
・ティドワル=ティドグリドの砥石
・グゥイズノ=ガランヒルの篭
・クリドゥノ=アイディンの絞首索
・パダルン=レドコウトの外套
・リゲニズの壺
・リゲニズの皿
・ライフロデズのナイフ
・グウェンドライのグウィンズブイル板
・デルヌウィン

 名前が挙げられているだけで何が何やら……。

 このようにアーサー王伝説には様々なマジックアイテムが登場します。今回はアーサー王の所持品について取り上げましたが、他の登場人物も様々な武具や道具を持ち出すのです。
 時にはこのような不思議なアイテムに思いをはせて、想像力を広げても面白いのではないでしょうか。

 以上を持って第五回「鞘とその他の装備品」の講義を終わります。騎士物語の古典と思われているであろうアーサー王伝説ですが、その内実は剣と魔法のファンタジーです。お堅いばかりの古典ではありませんので原典に触れてみてはいかがでしょうか? では今回はこれで失礼します。

 ああベディ。今回はサクッと軽め、しかし今後の展開を期待させる内容でした。アーサー王伝説は古典であるが新しい。それが判ってもらえるように今後も頑張っていきましょう! では後は頼みましたよ。

 セイバーが鼻歌交じりに出て行くのを見送って、ベディヴィエールは次回講義を予告した。
「次回の講義テーマは「その人。アーサー」です。アーサー王のモデルとなった人物についても解説と、アーサー王の生まれの秘密などについての解説がなされる予定です」

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